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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
4話
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が、痩身ながら軍服から盛り上がる筋肉の感触と、精悍な顔立ちは実戦を潜り抜けてきたベテランという言葉が似あうだろう。
 男と喋っていたスーツ姿の男がジゼルとクレイを見とめ、男に何か喋る。こちらを振り向いた男が、その深い顔を気さくに破顔させた。
「随分早いな、ハイデガー少尉」
 敬礼しながら、男―――クセノフォン・ブリンガー中尉がその容姿通りの重い声で言う。2人も素早く敬礼を返し、そうして敬礼を解くと、「早く見たかったもので」とクレイも大人らしい、落ち着いた笑みを返した。
「ではこれで失礼します」
「ああ、すまなかったな」
 一礼したスーツ服の男が言うと、どこかへ向かって行ってしまった。
「誰です?」
 隊に縁のある人間ではないらしい―――ジゼルがクセノフォンに尋ねる様を見れば、そう推察できた。
「今回回してもらった機体の開発会社の人だ」
「アナハイムですか? サナリィはまだ本格的にはMS開発に手は出してないですし」
 クレイが口をはさんだ。
 地球連邦軍の運用するMSの開発・生産は、そのほとんどがアナハイム・エレクトロニクス社で行われている。それどころか艦船や家具、果てはペットの販売にまで手を出しているアナハイム・エレクトロニクス社という巨大企業がMS開発・生産の業界で幅を利かせている現状で、他にMS開発を請け負う会社などはごく少数だ。サナリィにおいて小型MSの概念が提唱されたのはつい最近のことで、早くもその概念実証機たるD-50《ロト》と呼ばれる機体が開発されたが、《ロト》はあくまで歩兵科支援の機体の範疇を出ない機体だ。
 というわけで、現行MSの開発を請け負う大企業はアナハイム・エレクトロニクス一択といっても大きな誤謬は生じないだろう。
「まぁなんというか曰くつきって奴さ」
 顔をやや曇らせ、クセノフォンが声を濁らせる。
 表にしたくない事情、ということか。容易に判断したクレイは、顔を顰めた。
「確かに色々黒い噂のあるとこ出の奴だが、性能は折り紙付きだ。単純な戦闘能力なら《ZZガンダム》にだって劣らないと言っていい」
 フォローするクセノフォン。自分で言うからには性能は見聞きしただろう―――なにせ、自分の部隊の小隊長である。信ずるに値するのは言うまでもない。
「まぁ見てみましょうよ。珍しい機体らしいじゃん?」
 特にMSに詳しいわけではないジゼルは、既に何の機体かわかっているがどんな機体なのかはわかっていないらしい。
 ほらほら、と言いながら、ジゼルの手が伸びる。クレイの左手を柔らかく握ると、「じゃあ行きますね、隊長」とぱりっとした敬礼をしてみせた。
「おう、行ってこい」
 砕けた敬礼をするクセノフォンに、クレイも慌てて敬礼を返す。大人びた―――というより、大人の微笑みを浮かべたクセノフォンが視界に入るのもつか
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