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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
4話
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93EMP《リゼル》だと伝えられていたが、クレイと、そしてジゼルが乗る機体がなんなのかは不明だ。フェニクスは知っているらしいが、曰く「見てのお楽しみ」らしい。MSマニアなら垂涎のショーだ、とも言っていた。
「なら良かった。この後一緒にいかないって聞こうと思ってたの」
「それは助かります。基地内の大よその配置は覚えたつもりですけど、不安な面もありましたから」
 嬉しい誘いだった。「よかったよかった」と頷いたジゼルは、早くもサンドイッチを平らげて2つ目―――否、3つ目をむしゃむしゃと食べるオーウェンにも、「どう?」と尋ねる。
 数秒の沈黙。黙々とサンドイッチを口に押し込み、ちゃちなガラスのコップに注がれた水で口内の食べものを胃に押し込む。
「俺は《FAZZ》のレポ書かないとだから無理ぽ」
「まだ出していなかったの?」
「ちょっと忙しくて時間が取れなくてな」
 表情一つ変えず、手を眼前でふりふりする。否定の意らしい。
 ―――ぽ?
 不審に顔を顰めていると、すっくと立ち上がったオーウェンの鈍色の瞳がクレイを見据えた。静けさの中に鈍い刃を湛えた重たい瞳が見透かすように刺す。思わずたじろぐと、不意に『見知った』笑みを浮かべた。
 空になった皿を載せたトレーを片手で持ち上げると、空いている手をおもむろに突き出す。握り込まれた拳から、指が一本―――親指がびしっと屹立した。
「楽しみにしている」
 意味深な言葉を吐くや、さっさと返却口へ向かうがたいの良い男。先ほどの視線と笑み、そして今の言葉は一体何だったんだ―――というか食べるの早すぎだろと思っていると、ぱん、という破裂音が鼓膜を叩いた。
「ごちそーさまでした」
 深々と頭を下げる隣人。見れば、皿に盛られていた食パンはいつの間にか姿を消しており、プレートに残っているのはカレーヴルストのケチャップの残骸だけだった。

 司令部本部の建物より数十分。軍務用のオリーブドラブで塗り染められたエレカで市街を抜け、円柱の反対側に存在する周囲数十キロにわたる広大な演習区画に隣接するようにして、第666特務戦技評価試験団付きの格納庫はあった。
「これ、第4世代規格の格納庫ですよね」
 遠くから、白と蒼という清潔感のある色の格納庫を眺めたクレイの感想がこれだった。じりじりと肌を焙る人工太陽の陽光を受けながら、ジゼルを見やったクレイはすぐに目を逸らした。
「まぁ《FAZZ》運用してるし。ウチの部隊で使っている《ゼータプラス》と《ズィートライ》も特殊戦装備でスペース取るからわざわざ4型格納庫使っているのだろうけど」
 手をひらひらと仰ぎながら、しゃんしゃんと歩くジゼルのおさげがひょこひょこと左右に幽れる―――同時に、彼女の胴体で最も柔らかさの属性を持つ部位も、上下に揺れていた。
 下は灰色と緑で
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