3話
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が内側に響いていく。
「神裂攸人少尉、クレイ・ハイデガー少尉入ります」
いつもと違う、凛とした口調で攸人が言う―――すぐに応答があった。どこか緊張感のある電子音が鳴ると、「入りたまえ」という機械越しの声が耳朶を打った。扉の縁に備えられたインターフォンらしきものがそれだろうか。
クレイが扉の取っ手に手を駆けようとすると、再び鼓膜をチクチクするような電子音が鳴る。続いてロックが解除される音が鳴るや、眼前に横たわる木製の扉がのっしりと口を開け始める。
「おぉ、これ自動ドアなのか……」
声を潜めたクレイが思わず言う。本当だな、と苦笑いを返すのもつかの間、顔を引き締めた二人が一歩足を前に出す。
MSパイロットに優先的に支給される個室の広さは精々が10畳ほどの広さで、それでも個室をあてがわれるというのは贅沢だという認識だ。クレイの想像では、司令官の執務室ともなればまさに清潔な「空間」がある―――とばかり思っていたが、眼前の光景は少しばかり違っていた。
広さにすれば、確かに個室のそれに比べて広いが―――さほど広大というわけでもなく、せいぜいが下級士官の3倍ほどの広さだ。先ほどの扉に比べれば、慎ましさが感じられる。扉とは大きな違いだな、と後ろで軋みをあげている扉に意識を束の間向けて、そしてすぐにデスクに座る男に視線を向けた。
二人そろって敬礼。ぱりっとした構えと共に緊張が心臓を叩き、クレイは口を結んだ。
「朝早くからご苦労。もう下げても構わんぞ」
質素な部屋の主―――少し向こうの、扉と同じく厳とした木質でつくられたデスクに座る初老の男が柔らかな声で言う。
浅黒い肌に、白髪をたっぷりと蓄えた紳士然とした男―――『ニューエドワーズ』を預かる司令官、ハミルトン・オルセン少将は、朝っぱらだと言うのに溌剌とした様子だ。歴戦の猛者、というよりかは知将といった印象を受ける。
その脇に立つ、金髪のショートヘアの女性が秘書なのだろうか―――とすると、とふと疑問がかける。
ハミルトンとその秘書のほかに、もう一人いた。腰まで届く漆黒の髪に、ところどころメッシュのごとく黄金を差した特異な髪をハーフアップに結わえた、20代後半から30代前半ほどの女性だ。勤務服でもラフな方、SDUと呼ばれるそれの襟章を見れば、階級は大尉だ。琥珀色の麗とした瞳がクレイと攸人を交互に見やる。
少しだけ、その女性が笑った。
ハミルトンに従い、クレイは腕を下げた。
「まずは、ようこそニューエドワーズへ。君たちの士官学校での成績は聞き及んでいる。前途有望な貴官らを迎えられて、私も嬉しく思う」
肥沃な土を想起させる黒々とした顔の皺を深くする。自然と身体に不自然に張り巡らされていた緊張がほぐれるのを感じた。
「早速で済まないのだが、貴官らが配属になった第666特務戦技評
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