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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
3話
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の軍服に身を包む、ぴかぴかの軍人と言うがよっぽど珍しいのか、クレイと攸人を見とめた男が目を丸くして二人を注視する―――が、自分の用事を思い出したか、足早にすれ違っていく。
「どっかでは世話になるだろう人その1ってとこか」
「どうだろう」
 足を引きずりながら駆けていく背を見送る。
 そのあとは、特に取り留めもないこと―――来るときに見かけたあの2機のことや、自分たちが乗る機体は何だろう、といったとりとめもないことを語りながら通路を進み、エレベーターを昇ったりしている内に、基地司令の執務室があるエリアにつく。流石にそのエリアには民間の人間はあまり出入りしないらしく、音1つない通路がまっすぐに延び、その途中に執務室がある―――らしい。よほど熱いのか、一番上のボタンを開けていた攸人が慌ててボタンを閉めはじめるのを流し見、「前々から閉めとけよ」と言いながらもエレベーターの扉の解放ボタンを強く押し込む。赤い蛍光が点灯するのを確認すると、エレベーターから降りたクレイが振り返る。
「悪い悪い。暑くて暑くて」
 慌ててエレベーターから降りた攸人が照れた笑みを浮かべる。
「暑いっちゃ暑いけど、最初からだらしなくいくのは良くないだろ?」
 確かにな、と頷き、ようやくボタンを閉めた攸人が歩き出すのに合わせて、クレイも続く。道すがら、攸人が深く息を吐く―――この男なりの、気持ちの切り替えだ。普段はだらしないというかいい加減なことが多い男だが、しっかりする時はちゃんとしっかりする奴だ。
 攸人がもぞもぞする様子を横目で見ながら、クレイも大きく息を吸い込み、そして吐き出す。彼のは、緊張をほぐすためだ―――基地司令ともなれば雲の上の存在だ。直接の面会などそうそうあるものではない。
軍靴が地を踏むころころとした音が耳朶を打つ。他に音もないせいか、やけに通路に響いていく。
 60mほど単調な演奏会をしていると、その扉が目についた。
 セメントの通路の途上に突如現れるクラシカルな深く淡い色の木製の扉。なるほど執務室然とした風采を放っている。
「こういうの、連邦だと珍しいな」
 身の丈を優に超えるその巨大な扉に呆気にとられながら、下から上まで眺めたクレイは、ぽかんとしながら口にした。
「そうなの?」
「連邦はどっちかというとシンプル無味って感じのデザインが多いからな。士官学校の教務室の扉がいい例だ」
「あーあの単なる灰色のやつな。確かにこういう感じじゃないよな」
 クレイと同じように扉を見上げると、攸人は支給品の腕時計をポケットから取り出す。儀礼用勤務服に似つかわしくないガンメタルの黒々したごつい腕時計に視線を落としていた。
「んじゃあ入ろうぜ」
 「ああ」と応じると、手を振り上げた攸人が木製のドアを2回叩く。その衝撃を飲み込むような、厳かで小気味良い音
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