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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
2話
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はそういうのに疎くて……」
 困ったような、照れたような複雑な苦笑いを浮かべる。17歳にしてサナリィに就職し、エンジニアとして新鋭部隊に配備される才媛。容姿も飾ったところは無いけれど、十分に端麗な容貌とも居てもおかしくないと思うけれど。横目でモニカを眺めながら、クレイはなんとなくシートの座り心地が悪いことに苛々していた。
「私って自分の話を始めると際限がなくて……つい色々喋り過ぎちゃうんですよね」
 苦笑いはそのままに、後頭部を掻きながら言うモニカの声色は少し哀しさがある。自分の話―――趣味だろうか。それなら覚えがあると思ったクレイは大きくうなずく。
「すみません、私はそういう話には力にはなれませんで」
「いやまぁ、別にたいした問題じゃないですよ」
 頭を下げるモニカに対して、クレイは慌てて制止する。地球連邦政府への軍事出資を始め、サナリィが連邦政府から得ている信頼は厚い。あまり相手の機嫌を損ねるのは、地球連邦軍としては居心地が悪いことだという理由もあるし、またクレイは他人に謝られるのに慣れていなかった。
「女の子ってのも、よくわかんねーもんだな」
 眉間にしわを寄せ、随分思案した後の攸人の感想はそれだった。彼女持ちだったくせによく言うよ―――というのは、モテない男の僻みでしかないか。居住まいを変えながら、クレイは尻のポケットに刺さっているボールペンを抜いて、右足のポケットに指しなおした。
(こちら『ウェンディ』、ニューエドワーズ』からのお出迎えだ)
 館内放送―――といっても3人向けの極私的な放送が耳朶を打る。40代の半ばほどの機長の声の声色は、どこか嬉々としたものだ。出向前は不機嫌そうな顔をしていたのになぁと四角形のスピーカーを眺めていると、モニカが「見てください!」と甲高い声を張り上げた。彼女の隣にある窓の向こうには、冷え冷えとした黒の世界―――生命の存在を頑なに拒否する永久の宇宙が広がり、その中に満ちる恒星の煌めき。気が遠くなるほど彼方に存在する恒星の光とは異なる、青白く揺らめく光が目に入る。宇宙という空間のせいで相対距離が掴みにくいが、モニカ越しに眺めた窓の中に、クレイの視線はそれを認めた。 一見すれば戦闘機のようにも見えたが、後部に位置するスラスターユニットはどう見てもMSの脚部だ―――可変機構を備えた、TMSらしい。
「Zタイプ……じゃないな。なんだ?」
 身を乗り出した攸人がクレイを見下ろす。
 かつてのグリプス戦役時代に開発されたMSZ-006《ゼータガンダム》は、第3世代機でも優秀な機体だったと言われる。エゥーゴやカラバに量産モデルが多数配備されたのは有名な話で、エゥーゴが地球連邦軍に再編成された折に地球連邦軍でも正式採用された機体だ。正確にはMSZ-006A1から連なる量産モデルは、現在でも地球連邦軍の主力機だ
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