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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
2話
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ることを告げていた。
 身体に纏わりついた倦怠を洗い流すようにのろのろと伸びをすると、「起きたか」と顔が覗き込んだ。
 艶のある黒い髪に、日本人らしい童顔ながらも端正な顔立ちは、誰もが振り向く―――とまでは言わずとも、女性に人気がありそうな二枚目に違いは無い。神裂攸人少尉―――名前の通りの極東アジア日本出身の男は、クレイの母校たる士官学校でも首席で卒業した天才肌である。クレイは次席。優秀でこそあれ、皆から注目を集める天才という側面は皆無に近い。
「魘されていましたよ?」
 もう一つの顔が左から覗き込む。攸人と同じ黒髪だが、女性の割にはあまり手入れがされているようには見えない。されど利発そうな顔は、17歳という幼さを感じさせない知的な女性だった。
 今回クレイと攸人が配属されることになった部隊設立に関わった、海軍戦技研究所、通称サナリィ。そこから出向することになった新鋭のエンジニアであるモニカ・アッカーソンがおずおずと言った様子で白い手触りの良いタオルを差し出すのを受け取ると、感謝の言葉を返しながら顔を拭った。滲んだ脂汗を綺麗さっぱり拭き取る―――思ったより汗をかいていた。
「なんだよ、女に振られる夢でも見たのかよ?」
「彼女いない歴=年齢故にその推測は蓋然性があるが違う」
 肩を竦めて見せながら、攸人のからかいを軽くいなす。もちろん、攸人とそれなりの付き合いだから当然知っている―――知っていてやっている。ちなみに、23年間の人生の中で振られたのは4回。あと7年で魔法が使えるようになるが、いっそそれを目指そうかという悟りの境地を開き始めている今日この頃だった。
「なんでお前は彼女出来ないんだろうな」
 至極素直な疑問らしく、攸人が首を傾げる。素直、というのがまたいやらしいところだ。この神裂攸人という男は、真剣にそれがわかっていないらしい。
「知ってたらもう居るよ」
「でもお前気配りとかできるし優しいし要素はあると思うんだがなぁ」
「優しいだけの男は便利屋ってだけで恋愛対象にならないってよ。良いお友だち」
 ぼすん、とシートに背中を預ける。考えるだけで不毛極まりない話だ。
 しぶしぶ腕組みしながら、感慨深げに、そして落胆の色をありありと表出しながら言う。そんなもんか、と納得したしたような納得できていないような面持ちで隣のシートに身を埋めた攸人も、腕組みして何事か思案する。
「モニカはどう思う」
 クレイの右に―――要するに攸人から見て隣の隣に座るモニカは、攸人の振りには即答しかねるように首を傾げた。悩んでいる間の数秒は静かなもの―――クレイと攸人、モニカが搭乗するこのシャトルは軍用でこそあるが、今回わざわざサイド2からサイド8『ニューエドワーズ』向けに出発した船で、200人を収容する連絡船の中は、がらんとしたものだった。
「私
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