1話
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流れ行く土色の岩塊。大きさはどれほどであろうか―――少なからず、18m以上の体躯を持つMSと呼ばれる機動兵器と同等の大きさはあるだろう。デブリの表面には何かの人工物が建設されており、ちかちかと弱弱しい赤い光を燈らせては火花を散らし、そうして永劫の渦の中を回り続けていく―――。
静謐の中――――冥を穿つ、桃色の閃光。
艦船の副砲が放った大出力の光軸が脇を掠め、船体表面を熱で溶かしたコロンブス級『クリストファー』の船体が揺らいだ。
(左舷Bブロックに損傷確認!)
(クラーケル・ヴォルフ』の発進急がせろ! このボロじゃサラミスとはやり合えんぞ!)
全天周囲モニター内部で艦内を錯綜する無線通信に耳を傾けながら、マクスウェル・ボードマン大尉は静かに言葉を待つ。
緊張は無い―――と言えばウソだ。UC.0079年より15年、常に戦場にその身を置いたベテランであっても、微かな判断の過ちにより容易にこの世界とはおさらばする憂き目にあうのが戦場だ。緊張するなと言うのは土台無理な話―――だが、かといってそれは過緊張ではない。むしろ、己の力量を引き出すための緊張。部下を死なせないための緊張だった。
(敵MS部隊の発進を確認。数6。機種照合RGM-89が2、MSA-007が4)
ブリッジに居るであろう、オペレーターの報告が合図だった。ネオ・ジオン軍のクリストファーは、外見上は民間の貨物船の体を持つ。MS中隊を出張らせてきたのは、サラミス級では逃げの姿勢を保つクリストファーを捕縛しきれないからだ。当然、船体にメガ粒子砲を叩き込めるはずはない。
なれば―――解は思案するまでもない。
「第162MS中隊第1小隊、出撃準備よし。ハッチ開けろ」
(クリストファー了解。ハッチ解放)
戦闘態勢に入ってより、格納庫に整備兵はいない。即座に解放されてゆくコロンブス級の背面ハッチの状況をHUD上で確認していると、無線通信のコールが入る。第162MS中隊クラーケル・ヴォルフのコールサインである、ヴォルフ03―――プルート・シュティルナー少尉からだった。素早く応答すると、機内カメラに映ったプルートは珍しくヘルメットをかぶっていたため、16歳という相応の少女然とも、青年然とも取れぬ瑞々しい容貌をうかがい知ることはできなかった。
(今回の任務はどうすればいいわけ?)
溌剌とした調子の少女の声が耳朶を打った。階級が下で、年もだがプルートの口ぶりには微塵も丁寧さがない。今更それに特に含むところも無く、マクスウェルは機内の細かい調整に視線を流していた。
(今回は逃げれば勝ち、なんだから敵の撃墜に拘る必要はないんじゃないかしら。むしろ半殺しぐらいに留めておいた方が。こっちとしてもやりやすいし)
プルートに応じたのは。ヴォルフ02―――エイリィ・ネルソン中尉のどこか気の抜
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