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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
33.君を想う人を忘れないで
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…キャアッ!?」
「うわっと!?」

 結構な速さで走っていた筈なのに、ベルの身体にぶつかった影はとても軽かった。
 唯の子供でないのなら小人族だろうか。ぶつかってバランスを崩した彼女はうつぶせに転倒した。
 悲鳴から相手が女の子であることに気付いたベルは慌てて声をかける。

「ご、ごめん!怪我はない?」
「くっ……こんな時に、また……!」
「え?またって、一体――」
「――もう逃がさねぇぞ、クソ小人族(パルゥム)ッ!!」
「え?うわっ!?」

 突然割り込んできた声の方を向くと、そこには剣を掲げて怒り狂う冒険者らしき男が走り込んでくる姿があった。手に剣を持っていて、しかも小人族と叫びながら斬りかかってくるという事は――まさか、こんな街中で彼女を斬るつもりなのか。

 咄嗟に腰からヘスティア・ナイフを抜き取ったベルは、ほぼ反射的にその刃を真正面から受け止めた。
 ガキィン!!と金属同士が衝突する。武器の重量では不利だったが、ヘスティア・ナイフの特性によってステイタス分上がった性能が拮抗状態を生み出す。

 背後から小さく息をのむ音と、ナイフに注がれる視線を感じるが、それを気にするより先に刃を振るった男が顔を顰めてベルに怒鳴り散らした。

「な、何だテメェ……そこの小人族の仲間か!!」
「え、いや、初対面ですけど……」
「ハァ!?じゃあ何で庇ってんだよ!邪魔するんじゃねえ!!」

 男は相当頭に血が上っているのか、怒りと不快感を隠そうともせずに怒鳴り散らす。
 しかし、何故庇ったのかと言われれば、ベルは堂々と答えるしかない。

「剣を片手に人を追い回す危ない奴がいたら普通庇うでしょ!追われてるのが女の子なら尚更ですよ!」
「ちっ……訳わかんねぇこと言ってんじゃねえぞクソガキィ!!」
「げっ……力づくでも来る気ですか……!?」
 
 激昂した男は再び剣を振りかざす。どうやら本気で斬りかかるつもりらしい。
 ベルは逡巡する。狙われている女の子はまだベルの後ろにいる以上、下がるのはもっての他。かといって斬り合いになれば怪我をするかもしれないし、ファミリア同士の諍いの種にもなりかねない。ならば、答えは一つ。怪我をさせずに追い払うしかない。

(出来るか……?いや、いける。あの人はリングアベル先輩と比べれば隙だらけだ)

 模擬戦を頼んだ時のリングアベルと男の姿を頭の中で重ねると、すぐに実力差が浮かび上がった。構えらしい構えもなく、ただ筋力任せに剣を振るっているという印象が強い。リングアベルも戦いの際はリラックスしているような動きを見せるが、実際にはどう攻められても動ける最低限の姿勢を崩さない。最初の一撃といい、それほど実力差の開いた相手ではないらしい。

 それにこの路地は剣を振り回すには少々
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