想いの交差点
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
えているらしい」
「それしかないでしょうね。下手に動けば異教徒を刺激しかねませんもの。ただでさえ上層が落ち着かない今の状況で下層までもが騒動を起こしたら、本格的な宗教戦争のきっかけを作ってしまう。この国はアリア信仰と中枢が繋がっているからまだ良いものの……そうでない国では、非力な信徒達から順に虐殺されてしまいますわ」
キリッと親指の爪を噛んでうつむくプリシラ。
大司教も、長く深いため息を吐き出した。
「かといって、ことがことだけに我々としても放置するわけにはいかない。事実確認を急げと上から直接指示されているし。私も、大司教の一人としてアリアシエルに召集されてしまったし。困ったものだねぇ」
「猊下からの召集命令? こんな時に、重役が一国集中なんて!」
「こんな時だからこそ、だよ。どんなに危険でも情報共有と検討は必要だ。どの国にも一応、大司教候補は居るし。大変だと思うけど、私が留守の間は君達に任せるよ、プリシラ次期大司教」
「……はい。心得ておりますわ」
聖職者らしからぬ装いながらも、プリシラは背筋を伸ばし、腰を折って。
敬愛する男性に対して上位者への礼を執った。
「どうぞ、ご無事で」
「君達も。クロスツェルにも。女神アリアの御加護があらんことを」
窓枠から背を離し、プリシラが下げた頭に手を翳す男性。
やがて顔を上げた彼女と信頼し合った視線を交わし、互いに微笑んだ。
「ところで、どうして踊り子だったのかな。単純に女性の格好で教会内外を歩かせるだけでも、あの子には相当な苦痛になったと思うのだけど?」
「何年前だったかしら。昔クロちゃんとアーレストに同じことをさせた時、二人のあまりの可愛さで発情してしまった変質者の男が居ましたの。教会の外にまで追い回され、押し倒されていましたわ。あの子、当時を思い出してさぞ辛かったことでしょうね。ふふっ、可哀想に」
「…………えー、と…………」
艶然と微笑む聖職者に、さすがの大司教も言葉を失う。
「だから言いましたでしょう? 私は、最初から最後まで、自分が面白いと思うことしかしませんの」
アーレストとプリシラ。
賢く敬虔な二人の問題児に囲まれていて。
よくぞ、そこまで強く、たくましくなれましたね……と。
年老いた大司教は、クロスツェルに心からの賛辞を贈った。
「これは教会からの善意の資金提供です。無駄遣いはしないでくださいね」
宿へと戻ったクロスツェルは。
プリシラから貰った荷物を二つに分けて、片方をベゼドラに渡した。
大きく見えた袋も、中身を分ければ旅の邪魔にならない程度で収まった。
カバンが必要だろうかとも考えたが、取り越し苦労に終わったようだ。
荷物は少ないほうがなにかと楽で良いとは、これ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ