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逆さの砂時計
想いの交差点
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んだい? 単純に女性の姿をさせて教会内外を歩かせるだけでも、相当な苦痛になったと思うのだけど」
 「昔、クロちゃんに同じ事をさせた時、変質者に追い掛け回されていたからですわ。並々ならぬ辛苦を思い出して、さぞ嫌だったでしょうねぇ」
 「……えーと……」
 妖艶に微笑む聖職者に、さすがの大司教も言葉を失う。
 「だから言いましたでしょう? 私は最初から最後まで、自分が面白いと思う事しかしませんの」
 アーレストとプリシラ。二人の賢く敬虔な問題児に囲まれていて、よくぞそこまで強くなれましたね……と。老齢の大司教は、クロスツェルに心からの賛辞を贈った。


 「これは教会からの善意の資金提供です。無駄遣いしないでくださいね」
 宿に戻ったクロスツェルはプリシラから貰った荷物を二つに分けて、片方をベゼドラに渡した。大きく見えた袋も、中身を小分けしてしまえば旅の邪魔にならない程度で収まった。鞄が必要だろうかとも考えたが、取り越し苦労に終わったようだ。荷物は少ないほうがなにかと楽で良い……とは、これまでの経験則だった。
 「教会放っておいた割には気前が良いな」
 「ええ。私もそれなりの処罰は受けるつもりだったんですけどね。友人がかなり頑張ってくれていたようです」
 その分、後が恐い……なんて思ってから、少しだけ恥じる。が、やっぱり恐いと思って、苦笑いが止まらない。
 「教会への対応はロザリアを取り戻してから考えるとして……昼間は商隊に馬車を借りるか、歩きで北西に戻りましょう。跳んで行くのが一番速いですが、人間に見られるのは大問題ですからね」
 「面倒臭ぇー」
 「我慢してください」
 ベッドの上でダラダラと転がっているベゼドラにも苦笑しつつ、窓際に置いた植木鉢をそっと手に取る。
 「私はポケットに入ってれば良いのね」
 花の上で首を傾げたリースリンデが、精一杯腕を伸ばしてクロスツェルのコートにしがみ付く。ポケットの内側に入ってから顔をひょこっと出して「ありがとう、元気でね」と、花に手を振った。
 「ありがとうございました」
 そんなリースリンデに倣って、クロスツェルも花にお礼を言ってからサイドテーブルにそっと置く。
 彼を見上げるリースリンデが、少し嬉しそうに微笑んだ。
 「さて、行きましょうか」
 目指すは隣国に在るらしい静謐の泉。アリアが数千年の間眠っていた場所。
 今現在アリアが居るとは思えないが……可能性と情報を求めて、三人は王都を旅立った。


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