想いの交差点
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目立つ次期大司教様』の被害者に好意的だ。
彼女に大人しく従うとはつまり、周囲の同情心を買うことを意味する。
本人が一番嫌がることを見抜いて、的確に突く。
その行い自体が、教会規定の懲罰と同等の扱いなのだ。
クロスツェルが一週間耐え抜いた結果、彼は大司教の名の下に赦された。
餞別も、国を渡る為の許可も。
大司教が有望な彼に再修行を命じた結果用意された物だったとは。
クロスツェルだけが、知らない。
「放っておけないだけですわ。あの子、修行徒としてここへ来た当初から、既に半分は死んでいましたもの。アリア様への信仰心がなければ、とっくに自殺していたでしょう」
中央教会で修行を始めた頃の彼は。
健康的な部分を探すのが難しいほど、全身傷だらけで。
今は綺麗に整えられて光の輪が浮く黒髪も、悲惨なくらいにボサボサで。
その鋭い金色の眼差しは、浮浪児だった頃どれだけ酷い目に遭ったのか、人間なんてわずかにも信じていなかった。
ただ、アリアだけを信じていた。
アリアに仕える為だけに生きている。
そんな子供だったのだ。
クロスツェルは。
だから、アーレストもプリシラも、彼を構って構って構い倒した。
人間は敵じゃないんだと信じて欲しくて。
鬱陶しがられても、逃げられても、ひたすらに追いかけ回した。
友人だと認めてくれた時の喜びは、今もプリシラの内にある。
「でももう、大丈夫ですわね。あの子は強くなりましたわ」
「男の子は、護りたいものを見つけたら成長が速いからね。寂しいかい?」
「まさか。クロちゃんはちょっとお出かけしただけ。行ってきますの後は、ただいまを言わなきゃいけない義務がありますのよ? 破ったら、今度こそ本当に花嫁衣装でも用意しますわ。とびっきりの可愛らしいフリル付きで」
くるんと、大司教に体の正面を向けて高らかに宣言するプリシラは。
やはり嬉しそうに笑っている。
「すごく嫌がるだろうね」
「それが面白いんですのよ。いちいち似合うところは、女の自尊心を微妙に傷付けたりするのですけど」
「君と同期じゃなくて良かったよ。近くに居すぎていたら、君という人間は見抜けないだろうから」
大司教も楽しげに肩を揺らして、柔らかな微笑みを返す。
「私は昔も今も、自分勝手で我がままなお嬢様ですわ。これからもずっと。それより、……状況に変化はありまして?」
ころころと楽しそうに笑っていたプリシラの表情が一転。
次期大司教としての威厳と品格を備えた、真剣なものに変わった。
大司教も、彼女の言葉を拾って眉間にシワを寄せる。
「正直厳しいね。混乱は深まっているようだ。現地の信徒達には、当面の間布教活動を慎むべしと伝
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