想いの交差点
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身を屈めて、プリシラの目元に口付ける。
ギョッとしたプリシラは彼から腕を離し、アーモンド型の目を瞬いた。
「驚かせてくれるじゃない。こんなこと今まで一度だってしなかったのに」
「そうですね。これまでのことと今回の協力に対する、感謝の印です」
「…………貴方、変わったわね」
「大切なものが見つかったので」
「そう」
「はい」
プリシラは、紅を塗った赤い唇をふわりと綻ばせ。
いつの間にか大きくなった友人の胸に、額で とん、と寄り掛かる。
「行ってらっしゃい。貴方に女神アリアの祝福が舞い降りますように」
「はい。行ってきます」
アーレストにされたように、と言っても、頬ずりまではしないが。
プリシラの小さな頭を抱えて、軽く撫でてから、与えられた荷物を手に、クロスツェルは執務室を、教会の敷地を出て行く。
旅立つ者の後ろ姿を笑顔で見送ったプリシラは、バルコニーへ足を運び。
両腕を天に突き上げながら、「んん――……っ」と全身を伸ばした。
着崩した長衣の裾が、少し強めの風にパタパタと揺れる。
「彼の誠意を真の物であると認めていただき、感謝しますわ。大司教様」
雲一つ流れていない青空の下で深呼吸した後。
カーテンで隠されていた大きな窓の外側に居る男性に目を向け、微笑む。
頭髪を剃り上げ真っ白な長衣を違和感なく着こなしている老齢の男性は。
穏やかな表情で腕を組み、窓枠に背中を預けて立っていた。
「あんなにも嫌がる姿を、公の場で一週間も延々と見せつけられてはね。あの子は相変わらず、君の趣味本位だと思っているようだけど。君は悪者のままで良いのかな?」
「あら。いやですわ、大司教様。私は、最初から最後まで、自分が面白いと思うことしか、していませんのよ?」
ただ、権力を持つ女の我がままに振り回された側の人間は、そうではない人間からだと、少ぉ〜し可哀想に見えるかも知れませんけど。
と、肩越しで振り返った顔が嬉しそうに笑う。
「ふふ。君は本当に、あの子が好きだね」
神父が務めを放棄するなど、決してあってはならないこと。
当然、罰は受けて然るべきだ。
クロスツェルの場合、教会の鍵をすべて開放したまま放置してきたという悪質さも問題視され、悪ければ処刑、良くても破門が検討されていた。
それを水際で止めていたのは、他でもない、プリシラだ。
過去のクロスツェルの功績と敬虔さを主張し。
確定している次期大司教の立場を活用して。
反発が強くならないように、それとなく彼を擁護し続けた。
その上での、民衆と信徒を前にした女装被害騒動。
多くの信徒は『昔から奇行が
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