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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 噂
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ったし」

 シャルルの言うとおり、昨日聞いた話では向かう道中で見かけたというものだったのでいればいいな、などと期待していないでもなかった。まぁ、道中ウェンディちゃんが負傷したことで期待は危惧に変化したのだが。
 というのも、ササナキの住人は噂についてあまり語りたがらないらしいからだ。一応聞き込みはしてみるつもりだが、自分の足で森を走り回り探す覚悟をしておいた方がいいかもしれない。
 肉眼で確認できてからは早いもので、数分後には入り口が見えてきた。秘湯とはいえ一応観光地として派手に飾られていたのでわかりやすいものだった。
 流石に人目の多い場所でおんぶは恥ずかしいとごねたウェンディちゃんを仕方なく下ろし、ササナキへと足を踏み入れると、暖かな空気と共に温泉特有の匂いが感じられ、同時に人のざわめきも感じられた。
 しかし、

「なんだか、町全体の雰囲気が暗いような……」
「ああ、ウェンディちゃんでも感じるか。観光地にしては、活気とかそういったものがあまりないように感じる」
「はい……なんだか町の皆さんの顔も少しやつれているような気がします」

 まばらだが、観光に来ている人間はそれなりにいて、お土産屋などで店員と会話している姿も見受けられる。
 いらっしゃいませー、と気前のよさそうな男の声。ようこそササナキへ、と耳当たりのいい女性の声。
 だが、それらにはなんというか……生気がない、というのだろうか。やる気がないとか元気がないとかそう言った感じではなく、むしろそれらがある上でやつれたような様子であるため町全体がなんだか妙な雰囲気をかもしていた。

「これは本格的にきな臭いな……、ドラゴンに以前に何かあるんじゃないかこの町」
「何かって何よ」
「んー、たとえば後ろめたいことをやってるとか、ドラゴンに生贄を要求されてるとか……」
「い、生贄!?」
「冗談だよウェンディちゃん。それくらい、妙な様子ってことだ」

 冗談。そう、冗談だといいんだけど。さっきからちらちらと町の人間に混ざって感じる決して好意的ではない視線とかが。
 なにかある、それは確実だろう。観光地にはあるまじき排他的なこの視線、監視するようなこの感覚が気のせいであるとは思えない。
 一人旅をしていればいろいろある、ちょっと目を離した隙に荷物を奪われたり、野宿のさいにモンスターなどから感じる殺気まで。
 そんな経験から(つちか)われた僕の感覚が、何かあると告げているのだ。

「二人とも、一応ギルドマークを隠しておこう」
「え? 一応今は私もシャルルも服の下に隠れてますけど……どうしてですか?」
「説明は難しいけど、しいて言えば勘かな。旅をしてきた中で培われた、ね」

 僕が割りと危険なこともしたことがある、というのは出会った日にドラゴンの情報
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