【白竜編】 噂
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もそも噂の出所がササナキかもわからないのに、逆恨みで後付して流したにしては全員が襲われそうになったというのを前提に恐ろしそうに語るというのはなんだかな」
正直、信憑性という面で言えばこれだけいろんな人物が噂を知っているというのは確実なものになるのでありがたい。
が、人を襲うというのはきな臭い。
もちろん僕やウェンディちゃんを育てたドラゴンがたまたま心優しく人間に対して好意的だっただけ、という可能性もある。
幸い誰かが食い殺された、という話は聞かなかったが万が一の可能性も考えておいたほうがいいかもしれない。
「そのドラゴン、怖いドラゴンなのかな……。お話、聞かせてくれるでしょうか」
「わからない。けど、悪い方向に考えておいたほうがいいかもしれないな。そもそもドラゴンでない可能性のがずっと高いんだから」
「そう、ですね……」
ドラゴンではないかもしれない、ドラゴンでない可能性のが限りなく高い。そんなことは僕に言われるまでもなくわかっているはずだ。それでも期待せずにはいられない、そんな様子だ。
ここ一週間ほどそれなりに係わりをもって接し、この少女が年齢の割りに随分しっかりものだという印象が強くなった。
それでも子供は子供。母親思いっきり甘えたい年頃だろう。
親に会いたい。そのためにはたとえ今まで何度ガセネタに騙されたのだとしてもわずかな希望に縋るしかないのだから。
僕は記憶がないからか、それとも自分で思っているよりそっけない性格なのだろうか。あまり親に会い甘えてみたい、会ってみたいという感覚は感じたことがなかった。それしか目的がなかったから、という感じだ。そもそも子供子供と言ってはいるが正直自分の正確な年齢はわからないのだから、もしかしたら背がでかいだけで僕自身まだ子供かもしれないのだ。
親の顔を覚えていない僕と、幼くして親と離れてしまったウェンディちゃんのどちらのが必死かといえば、当然この子のほうだろう。
今回の噂が真実であることを心から願ってしまうのは、今までのように自分のためだけではなく必死なこの少女が一緒にいるからだろうか?
誰かの頼みで動いたことはあっても、誰かのために動いたのは記憶の中で今回が初めてだ。まだ、この思考の答えはわからないが、いつかわかる日が来るのだろうか……。
「あ、もしかしてあれかしら。見えてきたわよ!」
暗い空気のまま黙ってしまった僕とウェンディちゃんを心配してか、シャルルが少しオーバーな様子で遠方に見え始めたササナキと思しき建物の集合を指差す。
一本道を辿ってきたのだ、ササナキであることは間違いないだろう。
「あ、本当だ。温泉の匂いが空気に混ざってる……」
「結局、道中でそのドラゴンを見かけることはなかったわね。それらしきものも見なか
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