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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 噂
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てしまったのがいけなかった。
 できたのは膝から落ち、そのまま顔面を叩きつけそうだったところをなんとかささえただけで、下半身……詳しく明記するなら膝にちょっとした擦り傷ができてしまった。
 大怪我ではなかったとはいえ、守るという役目を早速果たせず、ウェンディちゃんには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「いやいや、僕が気を抜いたのがいけなかった。まさか平地で転ぶとは思わなくて……」
「あんまり言わないでください、はずかしい……です」
「ご、ごめん。幸いササナキの温泉は傷にもいいって聞くし、できるだけ急ごうか」

 ちなみに、今ウェンディちゃんは僕が背負っている。
 最初はシャルルと飛ぶほうがいいのではとも考えたが、ふよふよと浮かぶ飛び方は傷に触るのでは、ということで第二候補だったおんぶが適用された。
 少々不謹慎ではあるが、正直この状況はけして悪くは無い。
 言っては悪いがウェンディちゃんの歩幅では時間がかかることは避けられず、僕が背負っていれば傷に響かないよう静かに歩いたとしても大分ペースは速いのだ。
 別に一刻をあらそうわけではないが、すでに15時は過ぎている。まだまだ暗くはならないが早めについて損はないだろう。それに、天候もあまりよくない。

「温泉、秘湯って言ってたわよね? ササナキがそこまで有名ではないとはいっても、本当に人を見かけないわね」
「ん、それはしかたないんじゃないか? 一般人ならあんな噂聞いたら恐ろしくもなるだろう」
「……山の中に雪の魔法を使い人を襲うドラゴンがいる、でしたよね」

 ウェンディちゃんが要約した噂の内容に、僕とシャルルが揃ってうなずく。
 竜の噂は、大分広がっていた。駅周辺、及びその近隣の人々からササナキの話を聞けば三人に一人はあの山には最近ドラゴンがいる、という噂話を持ち出していた。
 話を詳しく聞けば、噂自体は数ヶ月前からあったが最初はありえないと誰しも聞く耳を持たなかったらしい。だが、だんだんとただでさえ少ない旅行客の姿が少なくなり、もしかして本当に? と少しずつ広がっているらしい。
 ササナキから買出しに来る人間もいるそうだが、問い詰めていない知らないとはぐらかされるのだという。

「ドラゴンの噂は人を惹きつける……じゃなかったの? クライス、あなたが引っかかってきた噂もこんなものだったのかしら?」
「いや、正直あまり経験のないタイプだ。最初はそのササナキって町が集客のために流した噂かと疑った、雪の降る寒い場所なら温泉はもっといいものになるだろうしね。だが、人を襲うってのはいくら尾ひれがついたといってもおかしい。別にライバルがいるなんて話もないし」
「噂に騙されてわざわざ行った客が騙された逆恨みに、なんて可能性は?」
「んー、まあありえなくはないが……。そ
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