暁 〜小説投稿サイト〜
黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 噂
[6/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 今後、僕がこのギルドを離れる日が来るとしても、それまではこの二人を守るのが僕の役目なのだから。






「ごめんなさい、クライスさん……」
「いや、僕こそごめん。ウェンディちゃん……」

 次の日、僕は早速自分の役目を果たせないでいた。
 予定通り数日滞在できる荷物を持ち午前中のうちにギルドを発った僕たちは、電車に揺られること一時間弱、ササナキ近辺の駅に降り立った。
 遠出は久々らしく目をきらきらさせるウェンディちゃんたちと駅で昼食を取り、その後ササナキまでの詳細な道筋がのっている地図をそのまま駅の売店で探したところ、店員曰くなんと売り物の地図は無いのだという。
 何でもササナキは町といいながらそれほど大きなものではなく、しかも山の中に存在しているのだという。
 所謂知る人ぞ知る秘湯というものらしく、僕やウェンディちゃんのような若い人間が知っていることも結構珍しいのだとか。
 とはいえ自分で探し出さなければならない、なんて商売上がったりなことをしているわけではなくおおよその位置は伝聞で聞くことはできたし簡易地図もササナキへと続く山道の入り口に設置してあった。
 と、そこで問題になったのが、目的地は結構山奥らしく、それなりに道になっているとはいえ山道は荒いことに変わりは無いことだ。僕は言うまでもなく、飛べるシャルルも特にその辺は気にする必要は無かったが、ウェンディちゃんは別である。
 ササナキが電車やバスで行ける場所には無いという話は聞いており、ウェンディちゃんも流石に普段好んで着ているワンピースではなくズボンと歩きやすい靴を着用しているが、子供の足には少々きつそうな道であることに違いは無い。
 ちなみに僕はいつもどおり和服を纏っている。歩きづらいんじゃ、と心配されたが何年も似たような姿で旅を続けた身にそれは野暮というものだといえば、あっさり納得してくれた。
 僕がおんぶする、シャルルと一緒に飛ぶ、などの提案はもちろんでたのだが昨日子供がどうのと言われたのが少々気になったのか、頑なに大丈夫と繰り返し結局足場の注意と旅の経験による地形把握力の高さから僕が先頭、続いてウェンディちゃん、そして彼女がこけた時のためにシャルルが最後尾、ということで決着がついた。
 危ない足場は僕が注意しシャルルのささえもあり途中までは問題なかったのだが……。

「よりによって数少ない平らな道で転ぶなんて、あいかわずね。ウェンディは」
「うう、ごめんなさい〜」

 そう、数々の危険な場所をなんとか乗り越え平らな道に差し掛かり一息つけるな、と気を緩めた瞬間特につっかかりがあるわけでもなく、すべるわけでもない平らな道で、いきなりウェンディちゃんがスッ転んだのだ。
 戦闘中でも滅多にしないような反射で手を伸ばしたが、気を抜い
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ