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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 噂
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れた入り口をどうにか気を沈めた二人を先導して潜れば、予想通りというべきか和服に身を包んだ旅館の人間が迎えてくれた。
 その目はやはりどこかやつれたような様子だったが、今更それに対して何を言ったところで無駄なので知らないふりをして受付に直行する。

「ようこそササナキへ。ご宿泊をご希望でしょうか?」

 礼儀正しく腰を折りながら僕へと笑顔を向けた女性は、流石に受付の人間。他の住人に比べれば影の少ない瞳をしていた。
 僕たちの年齢に少々驚いたようだったが、特に気にした様子もなかった。
 適当なボロ宿に止まることの多かった旅の道中、こうした礼儀のなった受付が珍しい僕のほうが逆に言葉に詰まりそうになったほどだ。
 受付に肯定の意を返そうとうなずき、そこでそういえばと思いついたことがあった。

「ええ。僕とこの子、あとシャ……猫、動物ってここ構いませんか?」
「はい、問題ありませんよ。ですが、温泉のほうへ連れて行くことだけはご遠慮いただくことになっておりますが……」
「あー、それはここ以外の宿でも同じですかね」
「申し訳ありませんが、いろいろなお客様がご利用されますので……」

 やはり。
 思いついたことその一。シャルルの存在だ。喋って二足であるいて魔法で飛ぶとしても、シャルルの見た目はどうしたって猫である。
 不特定多数の人間がつかる温泉という場所で動物も一緒に、というのはやはり難しいことのようだ。

「シャルル、温泉は入れないらしいがどうする」
「……いいわよ、別に。汗をかくほど疲れたわけじゃないもの、体を拭く水道でもあれば」

 と、いうものの。その顔はどう見ても何で入れないのよー、と叫びだす一歩手前だ。しかし自らの見た目はしっかり自覚しているため理性が勝っているといったところか。

「猫がしゃべっ……あ、いえ。お値段は多少上がってしまいますが、一応簡易な湯船の付いたお部屋もご用意できます」

 先ほどの情報収集の合間合間にも何度か見た反応をなんとか押し殺しつつ、受付の女性がそう付け足してくれた。
 喋るモンスターや人間以外の生物は少ないとはいえ、一般の人間にもそれなりに認知されている。とはいえ猫のような見た目をした種類は一般的には知られていないため、当然唖然とされる。
 しかもウェンディちゃんの話によれば卵から生まれたのだとか。正直僕も未だにシャルルがどんな生物なのかはわからずじまいである。

「じゃあそこで。っと、その前に」

 はい、といいかけた受付の女性に手で静止を求め僕はウェンディちゃんに振り向く。

「なぁ、部屋どうしよう。二つとろうか?」
「え?」
「あ」

 二人にだけ聞こえるようにささやいた台詞に、二人は正反対の反応を示した。
 ウェンディちゃんは何故そんなことを聞
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