暁 〜小説投稿サイト〜
黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 噂
[2/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
よふと逃げ回る姿がちらほらと見えた。

「クライスさん、せっかくの情報なんですし、話だけでも聞いてみませんか?」
「竜の噂にはガセが多いが、そのガセすら少ない現状……。内容くらい聞いておいてもいい、か」
「お、じゃあこの野菜もう少しまけてもらっても……」
「内容次第だよ、お客さん」
「ぐ、お兄さん初めて見る顔だけど、ほかの人たちとはまた違った形でなかなか過保護だね」

 客にはウェンディちゃんがガセネタに踊らされないよう、僕が横から口を挟んだと思っているのだろう。まさかそのお兄さんもドラゴンスレイヤーだとは思うまい。
 もちろん、もろガセネタっぽい情報も少なくないのでその面での心配があったことも確かだ。酷いときは昨日出てきた町が三日前にドラゴンに襲撃された、などといった即興にもほどがある話もあるのだ。
 僕の移動速度が速く、本来なら移動に数日かかるところから次の町へ移動したりするので本人にしてみれば確認しようがないので適当でいいと思ったのだろうが。

「仕方ない、先に話すよ。俺がこの話を聞いたのは一週間ほど前だったかな、ちょうど行商からの帰りだった。真っ青な顔した若い男に馬車の荷台に乗せてくれって言われてな、そのとき道中の話で聞いたんだ」
「いきなり怪しい……」
「ま、まあ最後まで聞いおくれよ。それでその人は観光目的で旅をしてたそうなんだけど、体にいい温泉があるっていうササナキって町に行こうとしてたらしいんだ。その人はのんびりとした旅が好きだとか言って、森の奥にあるっていうその町に徒歩で向かってたそうなんだが、そのとき見たんだってさ辺りにある木々なんか比べ物にならないくらい巨大で真っ白な竜の姿を」

 まるで怪談話でもするかのように、話の要所要所に緩急をつけてしゃべる男性客。
 しかし、それだけきくとどう考えても……。

「それ、ワイバーンとかじゃなかったんですか?」

 おっと、僕の思考をウェンディちゃんが先読みしたように代弁してくれた。
 よく考えなくてもその話の落ちはそんなものだろうと、子供でも予想できるたのだろう。
 ワイバーン。二本の足と巨大な翼を持ったモンスターの総称だ。ドラゴンとの違いは多いがわかりやすいのは足の数であり、二本足と巨大な翼をもつのがワイバーン、竜は四本足に翼だと云われている。他にも体格に大きな違いがあり、ワイバーンは推定五メートルから大きくても十メートル弱。ドラゴン、グランディーネはウェンディちゃん曰く三十メートルは超えていたらしい。
 というか、むしろ竜とは巨大なワイバーンを昔の人間が竜として扱っていたのではないかといわれている。御伽噺の竜ほどワイバーンとは強力無比な生命体ではないが、魔法技術の発展が今ほど進んでいなかった古の人間たちからしてみれば、通常個体の数倍もあるようなワイ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ