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逆さの砂時計
いつか見た姿
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 なのに、あの莫迦。本当に、途中で死にそうになりやがって。
 手助けなんぞしたくもなかったってのに、体が勝手に動くんだから仕方ないだろ。
 「ありがとう、ベゼドラ」
 「……クソッ! 次は知らないからな! 適当な仲間でも見付けてこい!」
 「くす……そうするよ。本当は、お前が居てくれると嬉しいんだけどな」
 「頼るな、ど阿呆!」
 弱々しい姿なんぞ見たくもない。だから適当な事を言ったのに、アイツは本当に仲間を集めやがった。最初からそうしとけっつうの。
 暫くはアイツらが進む先を遠くから眺めてた。神々と人世界を繋ぐ唯一正式に認められた巫、天神の一族の末裔が加わった辺りで興味は殆ど無くしたが……異空間に吹っ飛ばされたと聞いて、そんなものかと落胆したのも覚えてる。


 目障りだったレゾネクトが消えて、人間共は浮かれ放題だった。
 アイツも、英雄として讃えられて喜んでるんだろうか。
 俺は人間の滑稽さが可笑しくて堪らず、いろんな手段で遊んでた。そうこうしてる内に、忌々しいあのアリアに封印されたが……。
 「一番つまらない死に方だよな。なにが英雄だ、莫迦が。魂くらい置いて行けっつーの」
 太陽みたいな金色の髪を揺らして、カラカラと笑う人間はもういない。
 真っ直ぐ前だけを見てた橙の眼差しは、その所為でクソつまらない道に転落した。
 墓でもあればでかでかと「大莫迦者」と書いてやるのに、記念碑すら遺してねぇでやんの。
 レゾネクトも居やがるし、全部無意味だったな? バーカ。
 「ふ……。莫迦馬鹿連発してると、ロザリアみたいだな」
 悪いな、アルフリード。前言撤回だ。俺はお前よりもロザリアを選ぶ。お前を思い出しても、ロザリアに繋がるだけだ。
 今、お前の魂があの頃のまま目の前に現れても、喰らおうとは思わない。
 ロザリアだけで良いんだ。
 欲しいのは莫迦な小娘一人だけ。
 ロザリアだけだ。

 ……それでも。


 夕闇が迫って来て、空を刻々と薄黒く染めていく。
 棒切れを振り回して遊んでた子供達が、笑いながら家に向かって走る。その背中は、出逢ったばかりの頃の強い子供を連想させた。
 必死で剣を振り回して、強くなって。
 結局はその強さを投げ棄てた弱い勇者。
 「じゃあな」
 今はいない、莫迦な子供に背を向ける。
 望む世界の為に命を懸けたヤツを見倣って。
 俺も、望むものを得る為に前へ進もう。


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