第三章
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「何か少し違う感じの」
「あの軍服古くないですか?」
「俺達の軍服よりも」
「古い感じの」
「そんな感じですね、まあ基地の中にいるってことは」
スコヴィッチは今も飲みつつ話す。
「正規の軍人ですから」
「ですね、じゃあ」
「別におかしくないですね」
「たまたま古い服着てるんでしょ」
「他に服がなくて」
こう考えるのだった、そしてだった。
三人は尚も飲んだ、夕食が終わっても。
もう雪は止んでいた、僅かだが夕焼けも見えていた。その夕焼けの空を見上げてだ、ブチャーノフはあるものを見た、それは。
「あれ、あれは」
「どうしました?」
共にいるスコヴィッチが問うた。
「何かいますか?」
「空に」
その空を見上げつつ言うのだった。
「太陽がもう一つ」
「ああ、あっちに」
見ればだ、太陽とは別の方にもだ。
丸く光るものがあった、スコヴィッチもそれを見て言った。
「もう一つありますね」
「しかも動いてますね」
「速いですね」
東から西に動いていた、その太陽は。
「随分と」
「あれは太陽じゃなくて」
「流星でしょうか」
酔った目での言葉だ。
「太陽でないとすると」
「そうかも知れないですね」
ブチャーノフも応える。
「太陽が二つあるとは考えられないですから」
「そうですね、流星です」
スコヴィッチは笑って言った。
「昼に月が見える時もありますし」
「流星が見えることもですね」
「あるそうですから」
スコヴィッチは星については詳しくないしあまり興味がないのでこう言った。それでこうした普通に適当に言ったのだ。
「ですから」
「そうですね、流星ですね」
ブチャーノフも頷いた、そしてだった。
二人はその丸く光るものから目を離した、その流星らしきものが幾つも出て何処かに飛んで行ってもだった。
彼等は気にしていなかった、そのうえで彼等の当直室に入ってだった。
先に食事に行っていたラスコーニンとまた飲みだした、シャワーを浴びてだった。
寝る時になってだ、スコヴィッチは二人に言った。
「これで当直は終わりですね」
「後は朝まで寝て」
「起きて朝飯を食って」
二人も笑って応える。
「その後はですね」
「当直を交代して」
「それで終わりですね」
「今回の当直も」
「はい、今回の当直も何もありませんでした」
スコヴィッチは本当に何でもない顔だった。
「穏やかな休日でしたね」
「クリミアと違って」
「本当にここは平和ですね」
「平和が一番」
「例え軍隊でも」
「そうです、平和で何もない世の中が一番いい」
まだ飲みつつ言うスコヴィッチだった。
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