第一章
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当直
休日、日曜の当直を喜ぶ人間はいない。
それはこのイワン=スコヴィッチ中尉も同じだ
スコヴィッチは基地の当直室に入ってだ、自分と同じく当直にあたっているヨシフ=ラスコーニン軍曹とミハエル=プチャーノフ上等兵に言った。
「やれやれだな」
「はい、日曜の当直は」
「嫌なものですね」
二人もスコヴィッチに苦笑いで応えた。
「折角のお休みが」
「当直とは」
「どうにもですね」
「貧乏くじですね」
「全くだ、ここは平和なんだが」
クリミアと違い、とだ。スコヴィッチは苦笑いのまま言った。今彼等がいるサンクトペテルブルグ郊外の師団司令部は実際に何もない。
外は寒いが建物の中は暖かい、騒動は何もない。
それでスコヴィッチは外の積もっている雪を見つつ話した。
「私達は当直だ」
「平和なのに何をするのか」
「ここにいるだけですね」
その当直室にというのだ。
「それならですね」
「やることは」
「酒か」
ロシア人としてだ、スコヴィッチは二人に言った。
「飲むか」
「はい、飲みましょう」
「ここは是非」
「ここは平和です」
スコヴィッチは実に呑気な調子のままラスコーニンとブチャーノフに話した。
「それに我が国ではお酒は」
「勤務中でも問題なし」
「むしろ飲まないと駄目ですからね」
寒い為身体を温めなくてはやっていけないからだ、だからロシア人は勤務中でも酒を飲むのだ。これはあのソ連も止めなかった。
だからだ、三人も勤務中で当直であるがだ。
「他の当直員も飲んでますし」
「何の問題もないです」
「というか普通の勤務中も飲んでますから」
「そこはいいんですよね」
「そう、ここはロシアです」
スコヴィッチは今から飲むことを楽しみにしつつ二人に応えた。
「それでは」
「飲みましょう」
「肴は干し肉がありますから」
「あと向日葵の種も」
「そういうのがありますので」
それで楽しもうというのだ、酒はウォッカだった。
三人は当直室で飲みだした、それも朝から。ロシア軍の休日の当直をはじめたのだ。
三人は飲みつつ適当に仕事をした、スコヴィッチは当直日誌をウォッカ片手に書き終えてから二人に言った。
「これでよしです」
「終わりですか」
「今日のお仕事は」
「今終わりました」
まだ朝の十時であるがだ。
「これで何もありません」
「ですか、じゃあもっと飲みましょう」
「ウォッカは幾らでもありますよ」
どんな状況でも酒だけはある、それがロシアだ。
「飲みましょう」
「何ならアルコールだけでも」
ラスコーニンとブチャーノフはもう顔が赤くなっている、それはスコヴィッチも同じだ。当然基地の中にいる他の当直員達
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