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禁じられた恋
第六章

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 そのパルジファルを演じた彼がだ、花の乙女だったミカエラと結ばれることはというのだ。
「それはあってはならないですから」
「確かに。それはね」
「パルジファルとしては」
「じゃあミカエラとは別の時に会うべきだったかな」
 少しくすりと笑ってだ、ヴィルフガッセンは言った。
「タンホイザーの時にでも」
「奥様はエリザベートですね」
「それか僕がヴァルターでね」
 そしてミカエラがエヴァだというのだ、作中で正統派で愛し合う二人でというのだ。
「会うべきだったかな」
「そうですね、しかし」
「しかし?」
「ルール違反でも」
「パルジファルと花の乙女として出会っていても」
「そうです、これからタンホイザーとエリザベートになり」
「ヴァルターとエヴァになればいいね」
 ヴィルフガッセンはヘルデン=テノールとしても言った。
「そうなればいいね」
「はい、最初は禁じられた恋でも」
 これは出会いとなった役柄での話だ、実際は違う。
「純粋な夫婦の愛を育んでいけばです」
「いいね」
「そういうものと思います」
「じゃあこれからもヘルデン=テノールとして色々なワーグナーの主人公達を歌うけれど」
「私生活ではですね」
「ヴァルターに徹するよ」
 パルジファルとしてではなく、というのだ。
「そうするよ」
「そちらも頑張って下さい」
「是非ね」 
 二人でこう話してだった、そのうえで。
 ヴィルフガッセンはミカエラと幸せな家庭を築いていこうと神に誓った、それはパルジファルと花の乙女としてはじまっていてもヴァルターとエヴァになっていっていた。禁じられた恋からはじまって正しい愛になっていた。


禁じられた恋   完


                            2015・4・16
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