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禁じられた恋
第四章
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「あの、お名前は確か」
「はい、ミカエラ=アリアドです」
「フロイライン=アリアドですね」
「そうです、ヘル=ヴィルフガッセン」
 お互いにドイツ的に呼び合うのだった。
「今回はじめて一緒にお仕事をしますね」
「そうですね、お生まれは」
「フィレンツェです」
「あのメディチ家の」
「そうです、そのフィレンツェで生まれて」
「歌手になられてですか」
「今ここにいます」
 ミカエラは自分からヴィルフガッセンに話した、このことを。
「神に歌うことを許してもらって」
「それは何よりですね」
「いつも教会で感謝しています」
「それは素晴らしい、それでスカラ座に来られて」
「一年です」
「専属でしたね」
「はい、この歌劇場と」
 そうだとだ、ミカエラはヴィルフガッセンに明るい笑顔で答えた。
「以前はローマにいましたが」
「ローマの歌劇場ですか」
「あちらにいました、ローマもいいところですよ」
「そうですね、フィレンツェもまた」
「イタリアはお好きですか」
「子供の頃から何度も来ています」
 旅行でだ、彼も両親もイタリアが好きで二年に一回の割合で旅行に来ている。実は今回の仕事でもイタリアに来ることが出来て喜んでもいる。
「大好きです」
「それは何よりですね」
「景色はよく空は青くワインも料理も美味しく」
「ドイツの方はよくそう言われますね」
「イタリア程素晴らしい国はありません」
 本心からだ、ヴィルフガッセンはこうも言った。
「今回も楽しませてもらっています」
「このミラノも」
「何かと」
「美味しい居酒屋やレストランは」
「色々多い様ですね」
「宜しければ紹介させて頂きますが」
 ミカエラはにこりと笑ってだ、ヴィルフガッセンに誘いをかけた。
「如何でしょうか」
「お酒にお料理をですか」
「はい、それに服も」
 それもというのだ。
「よいお店を紹介させてもらいますが」
「それもですか」
「そうです、私の知っている限りは」
「ではマネージャーともお話して」
 ヴィルフガッセンは二人だけで会うことでスキャンダルになることを恐れて最初はこう答えた、しかしこのことをだ。
 デュルクセンに話すとだ、彼にこう言われた。
「お二人でどうぞ」
「いいのかい?」
「ヘルもフロイラインもお相手がいませんね」
「だからなんだ」
「それならば問題なしです」
 それこそ何も、というのだ。
「ですから」
「いいんだね」
「はい、楽しまれて下さい」
「それじゃあ」
「下手なことを書くマスコミがいても」
「気にしなくていいんだ」
「ヘルはお一人なので」
 交際相手やそうした相手の人がいないからだというのだ。
「お気になされずに」
「それじゃあ」
「楽しまれて下さい」

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