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珠瀬鎮守府
響ノ章
昏睡
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き延びる事だったからな。あの日、私は攻勢に参加させられていた。恐らくはお前たちに殺させるつもりだったのだろう。木曾は確かに鬼神めいていた。だが、味方は明らかに本気ではなかった……私への吶喊を望んでいるようにも思えた。木曾の為に言っておくが、仲間が本気を出していたとしても木曾の吶喊を止められなかっただろう。だがしかしあの日は、味方は私を殺すつもりだった」
 木曾はあの日、確か魚雷を片方残したままだった。もしあれを全弾食らえば、如何な船だろうが轟沈は免れまい。そうして、旗艦を魚雷の脅威から守るはずの味方は本気を出さなかった。
 もし本当にそうだとしたら、あの日この姫は何を思って木曾と対峙したのか。
「お前たちの言葉を借りるなら、見た目も中身も変わらなければ、私を邪魔だと処分するような仲間より、扱いに困りつつも許容してくれるあの提督の元のほうがずっといい」
 鎮守府ではなく、提督の元、か。確かに三日月は姫を拒絶していたし、恐らく他にも、姫の存在を認識すれば問答無用で殺しにかかる者もいるに違いない。
「だからな、私の前で鬼の事を兎角言おうが、私は大して何も感じぬ。そうして、何故お前達が鬼の私よりも何かを感じているのか」
「そうは言っても、そう簡単には踏ん切りが付かないものなのよ……よし」
 伊勢はそういうと蛇口の元まで移動し、桶に水を注いだ。それを、頭に被る。
「くぅー、さっぱりした。うん、大丈夫ね。自分がやるべきことはやれる気がしてきたわ。やっぱり暑かったのが駄目だったのよ、うん」
 伊勢は言う。私達を振り返らぬまま。まるで、自身に言い聞かせるように。
「暑いか。そろそろ上がるか。私も体を洗い終えている」
「いいのいいの湯船に突っ込みなさい。なんか、ずぶ濡れになったことだし細かいことはもうどうでもいいわ。折角だし休憩がてら長湯してもらったほうが今は助かる」
 私は、まだ暑いんだけれども。
「響もどう、さっぱりするわよ」
「こんな夜中に浴場の前で見張りしてる提督の事も、偶には思い出してあげようよ」
 艦娘がここの近くを通ればこんな夜中に灯りがついていていれば何事かと思うだろう。中に入ってこないように提督はいるのだが、それでも気まずい事だろう。
「あー。けど提督がここで姫囲うって言ってるし責任も持つと言ってる。もう少し頑張ってもらおう」
「けど……」
「提督と代わるってわけにもいかないでしょ」
 そりゃそうだ。姫とはいえ女型。見せるのは互いのために良くない。
「私は構わんぞ。誠意を見せると言ったのだ。この場に来ても堂々としていると信じよう」
「ちょっと、あんた本気」
「冗談だ。だが、あの男も暇だろうし私は上がる。伊勢にはすまんがな」
「ま、いいわ。それじゃ上がりましょうか」
 私は一度提督を見てくると二人に声をかけて更衣
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