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珠瀬鎮守府
響ノ章
昏睡
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興で忙しいが、恐らく復興とは関係ないところで一番忙しいのではなかろうか。
「内地へ飛ばす……戦闘後遺症と今回の記憶障害を使えば十分可能だ。だが……」
 言い淀む白木提督。そりゃそうだ。確かに厄介な存在となったが、それでもそんな評価を与えた上で内地に送るのはあんまりだ。
「快復した三日月を、どうにかして説得するしかあるまい」
「そうですね」
 私もそれくらいしか対策は思い浮かばなかない。その後、私は目の下に隈を湛えた伊勢達と三日月の監視を交代した。第四艦隊は本当に多忙のようだ。いつか、倒れる人が出るんじゃないだろうか。



「あっつい……」
 その言葉ひとつひとつに濁点がついているような声で伊勢は呟く。そう呟きたくなる気持ちは私も大いに分かった。
 三日月の事件からまた数日経った後、私達は姫の風呂当番だった。あの日以降姫の警備はより厳しくなり、今直接監視しているのは伊勢と私。その他に風呂場の外に提督が居るそう、外に。私達は湯気が満ちた風呂場の中、服を来て此処にいる。
「睡眠時間の減少に加えて茹だるような熱帯夜。更には風呂場で服を来て姫の警備と……私、終いには倒れるんじゃないかしら」
「そうは言っても、三日月みたいな事件を出すわけにもいかないよ」
「わかっちゃ居るんだけどね……人手が少ないのよ、もう」
 幾らかご機嫌斜めな様子の伊勢。先日も眠気と闘いながら夜通し三日月の監視をしていたようだし、私からも伊勢たちの休暇を進言しておこう。
「なぁ、ずっと気になっているのだが」
 そんな私達を見て、姫は口を開いた。
「何、どうしたの」
「お前たちは、私を恨み、殺そうとせんのか。三日月とやらのように」
「上官命令に従うまでよ」
 黙ったままの姫に対して、伊勢は堪忍したように言葉を続けた。
「全く……嘘よ、嘘。本当はね、ただ単にあんたを殺したくないだけよ」
「何故」
「あんたは何故私達を攻撃しないのよ」
「攻撃すれば死ぬからな」
「嘘おっしゃい。やる気ならさっさと提督ぶっ殺してるでしょあんた」
 先程までの苛つきを引きずっているのか、伊勢は酷く口が悪かった。
「……お前達が襲ってこなければ私は戦わない」
「そういうことよ。今こうして話して、見た目も殆ど同じでさ……殺しにくい」
「捕虜、そういう考え方は人間同士で行うものと記憶しているが」
「そうだと私も思っていたんだけどねー。ほんとはさ、貴方を初めて見た時、このまま海に沈めようかと思ったんだ」
 その告白に私は固まるが、姫はなんとも思っていないのか続きを促す。
「けどさ。木曾と話してるあなたを見て、やめといた。その時ね、貴方達を見て、ただ言葉を交わしている人間のような錯覚さえ覚えた。私は、人を殺せない」
「私は人ではないぞ」
「貴方が言ったそうじゃない。
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