6部分:第六章
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第六章
「何か。あんまりにもスタイルがいいし。お顔も」
「女優とでもいうかしら、私が」
「それかモデルさんですか?けれど名刺じゃ社員になってますよね」
「残念だけれど社員よ」
沙耶香は彼女に向けてすっと笑ってこう述べた。
「そでうですよね、やっぱり」
「けれどそう見えたのね」
「ええ、何か」
見れば顔が少し赤らんでいた。
「そんな感じで」
「女優とかになるのには興味がないのよ」
沙耶香はその笑みのまま答えた。
「私が興味があるのはそれとは別のことだから」
「そうなんですか」
「じゃあ瞳ちゃんの楽屋はそこね」
「はい」
あらためて答えた。
「有り難う。じゃあそれでね」
「ええ」
こうして沙耶香は瞳の楽屋に向かった。楽屋のある階に着くともう番組が終わったのか慌しい様子であった。ふと廊下の終わりを見ればあのタレントが辺りのスタッフにあれこれと声をかけていた。
「皆今日も有り難うね」
丁寧な物腰で若いスタッフにも優しい声をかけている。噂通りの穏やかさであった。
「それで明日もまた」
「はい」
「頑張ろうね」
「それで明日のゲストはですね」
「うん」
何か打ち合わせもしていた。
「それはここだから場所を替えようよ」
「そうですね」
「お疲れ様でした」
ここで沙耶香が探している堀江瞳も出て来た。ピンク色のヒラヒラとした可愛らしい服を着ている。顔立ちは大人になり、身体もそうなってきておりそろそろそうした服が似合わなくなってきている。だがそのギリギリのところでえも言われぬ妖しさも醸し出していたのであった。
「瞳ちゃんもお疲れ様」
彼は瞳にも優しい言葉をかけた。
「また今度ね」
「はい、お願いします」
普通ならここで軽く声をかけたりするが彼はそれもない。タレントとはいっても何処までも小市民的であった。それがそのまま出ていた。
瞳は彼に挨拶をした後で楽屋に入る。沙耶香はそれを何気なく眺めていた。
「これでよしね」
彼女が自分の楽屋に入るとすぐに動いた。白い壁に手を当てる。
すると手が壁の中に入って行く。そのまままるで溶けるようにして壁の中に全身を入れていったのである。
瞳は楽屋の中で一息ついていた。ペットボトルのお茶を飲みながら漫画を読んでくつろいでいた。
「瞳ちゃん」
沙耶香は後ろから近付き彼女に声をかけた。
「マネージャー?まだ時間があったんじゃ」
「そうよ、時間があるからここに来たのよ」
沙耶香は彼女にそう返した。瞳が振り返ったそこには悠然とした様子で立つ彼女がいた。
「貴女は・・・・・・」
「聞きたいことがあるのだけれど」
瞳の問いを遮って逆に彼女から問う。
「貴女は最近誰かと仲がいいそうね」
「誰かって」
「答えて」
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