リースリンデ
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「人間って、変なの」
クロスが植木鉢？ に植えられた花を窓際に置いてくれたから、この子は今日も元気。陽光をいっぱい浴びて、嬉しいって喜んでる。葉に付いた埃も毎日宿の管理人？ が丁寧に掃除してるし、大切にされてるのね。
でも……植物を大切にする気持ちが有るのなら、どうして大地から切り離してしまうのかしら？ 植物は大地に根を張って、あらゆるものと生命力を共有してるのに。
大地に育まれた命は、朽ちた後もその身を大地に還して新しい命の糧になる。雨水も風も大地も陽光も月光も、時期毎に枯れゆく命にも、全部に繋がりがあって理由が有るのに。石畳を敷き詰めてその全てを遮ってしまったら、大地の生命力が衰えてしまう。きっと、この人間世界の下敷きにされた地面は、他の場所よりずっと再生力を失ってる。窒息しそうな気配がして、とても可哀想。
「次の命を残す事も許されないなんて……酷すぎるわ」
窓の外から見える世界はとても恐ろしい。所々に同じような植木鉢が置かれてるけど……植物を装飾品だとでも思ってるのかしら？ だとしたらとんでもない侮辱だ。植物が無ければ世界は循環しないというのに。人間はここまで身勝手になってしまったのね。
「……アリア様はどうしてこんな、生き物と形容するのもおぞましい存在を護ろうとなさったのかしら……？」
人間は世界の循環から大きく外れてしまった。
他の生命を省みない、同じ形のモノしか認めない卑小な心根。生かされてる事実にも気付かない傲慢さ。感謝の意味も忘れ、汚らわしい欲望を増長させるばかりの醜い肉塊。自らの糧にするでもない殺戮と略奪なんて、破壊を好む悪魔と何が変わらないのか。私には理解できない。
人間は嫌い。
元々嫌いだったけど、勇者達がいなくなってからはもっと嫌いになった。
同族同士で争うだけならともかく、他の関係無い種族にまで犠牲を強いる野蛮さに好感なんて持てる訳がないじゃない。
……でも、クロスは綺麗。
ベゼドラはどうでもいいけど……ううん。名前が発音し難いからベーって呼んだら爪の先で頬をつねられた。嫌いかも知れない。
クロスからは綺麗な力を強く感じる。ベゼドラにも感じるけど、それ以上に強く感じるの。大きな力とアリア様の細やかな……祈り？ みたいな力。
どんな関係かは知らないけど、アリア様は二人を護ろうとしてるんだわ。だから傍に居ても恐くない。寧ろ安心する。
アリア様に感じた以上の、聖天女様によく似た力も持ち歩いてるし……本当に不思議な二人組。
うん。
クロスの事は、嫌いじゃない。
「はい。どうぞ、リース」
「？ これは……」
教会でのお仕事後、クロスが何かを持って来てくれた。茶色の紙袋から出して見せたのは、蓋付きの四角い透明な器にたっぷり入ったハチミツ。朝露が飲めるな
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