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逆さの砂時計
リースリンデ
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らもしかして………って理由で買ったみたい。
 「少しでも力になればと思ったのですが……受け付けませんか?」
 「ううん。朝露よりは劣るけど、いつでも飲める分だけ楽になるよ。ありがとう」
 「良かったです」
 ニコッと笑うと、本当に柔らかな表情になるんだ。細めた金色の目が星明かりみたいで、とても綺麗。
 「蓋を軽く外しておきますね」
 捻って着脱する金属の蓋を一度外して、上にぽんと乗せる。それを植木鉢の横に置いてくれた。
 「ちょっと試してみる」
 花弁を降りて土に着地。鉢からぴょんと飛び下りて、私の目線ほどの高さにある蓋を除けてみる。少し重い。
 「……皿か何かに移しておいたほうが良いでしょうか?」
 「大丈夫。よい……、しょ」
 器をよじ登って、蓋が付いていた部分に腰掛ける。甘い匂いが鼻を突いた。黄金色のとろりとした液体を指先に絡めて舐めてみる。甘い中にも僅かに混じる独特の刺激が、ちょっと懐かしい。
 「……泉の周りでも、たまにだけど仲間と一緒に食べてたの。美味しい」
 「よく蜂に攻撃されませんでしたね?」
 「蜂は精霊を攻撃しないわ。精霊も蜂を攻撃しないもの。共存する相手に過分な手出しをしないのは当然だと思うけど」
 「……なるほど」
 不思議な事を尋くのね……と思ったけど、蜂は本来防衛本能が強い生き物だったっけ。
 実際、この容器に入ってる分だけでも確実に搾取されてるんだし、人間が敵意を向けられるのは仕方ないわ。人間だって食料を奪われたら怒るでしょうに。適切って言葉の意味も忘れたのかしら。
 「……それにあやかってる私も、今は言える立場じゃないか……」
 「はい?」
 あ。声に出してしまった。
 「ううん。なんでもない。ありがとう、クロス。ちょっと元気になったよ」
 蜂達もありがとう。ごめんね、大切な食料を横取りして。
 「他に力になれそうな事があったら遠慮なく言ってくださいね。都では人間が多すぎて辛いかも知れませんが、あと少しですから」
 「うん」
 少々出掛けてきますと行って部屋を後にするクロスを見送ってから、もう一度ハチミツを掬って舐める。甘い。
 「……みんなはどうしてるかな」
 私は運良く逃れてクロス達に拾われたけど、仲間達はちゃんと逃げられただろうか? レゾネクトに殺されてなければ良いな。そうでなくても、無事だと良い。
 アリア様……私達に人間の言葉や習慣を教えてくださった、二人目の優しい女神。お護りできなかったのが悔しい。
 私達は、導き手がいないとこんなにも非力なのね。神々がお眠りになってさえいなければ、お助けできた筈なのに。
 ごめんなさい、アリア様……。


 泉を想って思い出すのは、何千年も昔に出逢った女性の姿。
 「人間が嫌い? それは仕方ないわね。だって、やっ
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