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黒魔術師松本沙耶香  銀怪篇
19部分:第十九章
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第十九章

「この程度はね」
「まさか」
「私達が」
「貴女達に魔力があるといってもそれは自然のもの。そこから修練を積んだものではないわ」
 沙耶香は言う。
「それが魔術師の私に勝てる筈もないのはわかることだと思うけれど」
「魔術師の方が」
「それを生業とする私の方が上なのは自明の理」
 自信に満ちた声で述べる。
「言うまでもないことだけれど」
「けど」
「私達はまだ」
「まだ諦めないというのね」
 そんな二人を見てまた笑った。妖しさがさらに増す。
「それならこれはどうかしら」
「!?」
 左手の親指と人差し指を合わせて音を立てる。すると今度は雨が降りはじめた。青い雨であった。
「雨・・・・・・」
「雷は水に反応するもの」
 沙耶香は述べる。
「わかるわね。これが」
「うう・・・・・・」
「紀津音、大丈夫!?」
 見れば二人はもうかなりのダメージを受けている。服のあちこちが破れ怪我も負っていた。
「このままだと」
「理子、貴女こそ」
 紀津音は彼女に気遣いを返す。
「立てるの?」
「ええ、まだ」
 理子はそれに答える。
「けれどこのままじゃ」
「そんな、私達が」
「さて、勝負ありかしら」
 沙耶香はそんな二人を見下ろして言った。
「くっ」
「そのお肌に傷は残らないようにしてあげているけれどもう限界よね」
「ううう・・・・・・」
「安心しなさい。約束は守るわ」
 そう言うとすぐに右手を横に払った。すると雷と雨が同時に消え去った。
「けれど。わかるわね」
「わかってるわ」
「私達は貴女のもの」
「そうよ。幸いここは道玄坂」
 そうしたホテルで有名な場所である。通うのはカップルに風俗の女の子とその客である。ここのホテルは他の場所に比べて内装が洒落ていることで知られている。やはり若者の街である渋谷だからであろうか。
「じゃあいいわね」
「ええ」
「場所は」
「いいホテルを知っているわ。そこで」
 沙耶香は降りてきた。その両手に二人をそれぞれ抱えた。
「楽しみましょう。それでいいわね」
「ええ」
「それが約束だから」
 二人は項垂れてそれに答えた。
「私達を好きにしていいわ」
「何をしてもね」
「そんなに諦めることはないわよ」
 諦観を見せる二人に対して言う。
「私は何も取って食べようってわけじゃないのだから」
「けれど」
「楽しませてあげるわ」
 その目が静かな微笑を浮かべていた。二人を見ての微笑であった。
「貴女達に今まで知らなかった快楽を教えてあげる」
「今まで知らなかった」
「私達が」
「そうよ。さあ、来るのよ」
 沙耶香は言う。
「紫苑の宴に」
 そのまま二人を宴の場へと連れて行く。そして二人を彼女達が今まで知ることも
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