暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第170話 過去の闇
[1/11]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


――今日は本当に色々とあった。


 とても、この様に一言では現せられない程、濃密な時間だったと思える。あの世界ならまだしも、この世界……、現実の世界でそんな時が来るとは思えなかった。

 詩乃は、自身が暮らしているアパートに着き、ゆっくりと、コンクリートの階段を上る。2Fに着いて、階段から2つめのドアが、詩乃が一人で暮らすアパートの部屋だ。そして、スカートのポケットから鍵を取り出し、旧式の電子錠に差し込んだ。そして、そこ後小さなパネルから四桁の暗証番号を打ち込んで鍵を捻る。

 すると、“がちん”と言う金属音が重く響く。

 この暗証番号も鍵も、新たに変えた鍵、暗証番号だ。以前、トモダチ、と思っていたあいつらが使っていた番号と鍵は、あの事件以来即変えたから。また、覚え直すのには、多少面倒だったが状況を考えたら仕方がない。

 詩乃はそのまま、施錠確認のアラームを聞きながら、無声音で『ただいま』と呟く。勿論、応じる人はいない。もう、あの時の様な想いは嫌だから、これで良いんだ。


――……1人で。


「っ……」

 胸にチクリと何か、針の様なモノが突き刺さった気がした。そして、無意識にそっと視線を下ろし、自分の手を見た。もう、何時以来……だろうか。

 誰かに手をつないでもらった事、強く引っ張ってもらった事など。

 ずっと、もう自分以外は敵。この街の人間の殆どが敵だと言い聞かせてきた。そして、これまでも、これからもこれで良い。そうずっとと思ってきたのに。


――だけど、今日は何でだろう?


 そう思えば思う程、小さいがはっきりと、何かが痛む。

「いやっ……」

 詩乃は、自分の身体をそっと両腕で抱いた。否定したい気持ちとこの変な痛みが入り混じってしまっている。もう、二度と後悔しない為に、あの時の様な事にならない様に、と心に刻んだんだ。
 だから……。

 詩乃は、暫く身体を抱き、痛みと震えを抑える様にした後、ゆっくりと動きスーパーで買ってきた野菜等を冷蔵庫へ収めた。その後、通学鞄を置き、白のマフラーをほどく。コートを脱いでハンガーにかけ、マフラーと共にクローゼットの中へと収納した。
 そして、自身の制服にも手をかけ、スカーフを引き抜き、左脇のジッパーも下ろす。

「……」

 丁度その時、自身のライティングデスクに視線を向けた。そこに備え付けられている鏡で自分の姿を見る。

 今日は確かに色々とあった。
 だけど、その中でもあの遠藤達の要求を、脅しを正面から立ち向かえたこと、それが囁かだが、自信につながってきたのだ。確かに助けてくれたと言う事も勿論あるし、感謝もしている。
 ……その感謝の言葉を、心を伝えきれなかった事が気がかりだけど、間違いなく少し、
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ