暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第170話 過去の闇
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けていた。

 そして、それよりも再びあの破裂音が局内に響いたのだ。

「あ……あぁぁぁぁ!!」

 高い声を漏らしながら両手で腹を押さえているのは、あの男だ。どうやら、静脈を傷つけたのか、流れ出る血の量が多く、赤黒い円が男の服にできており、傷口を抑えたから、その手にも多量の血が着き、流れ出ていた。

 だが、まだ男は動けている。

 これは後にわかった事なのだが、この男は覚醒剤も使用していたから、という理由もあるだろう。

「がぁぁぁぁ!!!」

 奇声をあげながら、詩乃に迫る。詩乃にすれば、恐ろしい化物が襲いかかってきている。そう言う風にしか見えない。でも、詩乃の頭にあるのは、恐怖よりも、何よりも……。


――お母さんを守らなきゃ!!


 それだけだった。

 響くのは2発目の銃声。

 反動(リコイル)の衝撃を、今度は誌乃1人で受けてしまった為、肘・肩の両方に激痛が走ったが、それも気にしていられない。男は、倒れつつもこちらを凝視し、睨みをきかせているからだ。そして、あの耳をつんざく様な奇声も。

「ぁぁぁぁぁ!」


――……今度こそ、止めなきゃ。お母さんを守るために。


 そして、3発目の銃声。

 まるで、千切れる様な痛みの筈だった。 
 それをまるで無視し、仰向けのままで奇声を上げ続けている男の方へと進んだ。

 1歩、2歩。進んだところで、詩乃は今度は確実に狙った。

 男に命中したのは、最初は腹部、次は鎖骨あたり。動きを止めるなら、身体の真ん中だ。詩乃は、そのまま3発目の引き金(トリガー)を絞った。
 そこで、詩乃の身体は耐え切れなくなり、右肩を脱臼。左肩も殆ど脱臼しかけた。撃つ前に少し進んだ為、詩乃の身体を支えるものは背後にはなかった為、まるで弾かれる様にもんどりうって倒れる。
それでも、その銃だけは離さなかった。

 母親を守るために、必要な唯一の武器だったから。あの男が また、また襲って来るかもしれないから。

 詩乃のその心配は杞憂となるのだった。


 男はまるで、糸が切れた人形の様に身体をぐにゃりと歪ませ、重量のある頭から、ごとり、と音を立てながら床に落とした。……男は、頭の中心を。
 丁度額を打ち抜かれ、絶命していたのだ。

 この瞬間、詩乃に浮かんだのは守ったと言う実感だった。

 男は倒れて動かない。
 死んだ、なんて当初は思わなかった。だけど、すぐ思い知らされる事になるのだ。守るべき母親の顔を見た瞬間、当初は男に向けられていた恐怖の表情が、自分自身に向けられているのだから。



――その後詩乃の人生は更に悪夢が待っていた。



 マスコミ各社の自主規制により、事件の詳細がそのまま報道され
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