暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第170話 過去の闇
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かった。だが、詩乃は違う。


――ピストル? おもちゃ?……いや、本物!? 強盗っ!!


 詩乃は、普段から沢山の本を読んでいる。
 この手の話も多数読んでいたからこそ、この場の誰よりも早く順応し、状況を理解する事が出来たのだ。それでも、驚きのあまり、脚が竦んでしまったのは幼い少女であれば仕方がないだろう。

 そして、職員達もコンマ数秒後にはっきりと理解した。

 その血走らせた目、不自然に乱れている動悸。そして、向けられている圧倒的な暴力の象徴である凶器。それが、冗談の類ではない事は、その顔に、眼に、凄まじい凶兆として現れていたのだ。

「両手を机の上に出せ! 警報ボタンを押すな! お前らも動くな!!」

 拳銃を片手に機関銃の如きに早口で要求を続ける。
 忙しなく拳銃を動かし、奥にいた職員達の牽制を続けていた。

 この時、詩乃は必死にどうすればいいのかを考えていた。

――……母親を助けるのにはどうすれば良い? 助けを呼ぶ? でも、母親は倒れてしまっていて動けない。

 誌乃自身は、母親を守らなければならないと言う使命感が強く出ている。それ故に、そんな母親を残して行く事は決して出来ない。

「早く金を入れろ! あるだけ全部だ! 早くしろ!!」

 男の要求のままに、男性職員が顔をこわばらせながらも、右手で5cm程の厚さの札束を差し出したその時。“どぉんっ!”と言う音が、閉ざされた局内に響き渡った。

 音がなった時、まるで、空気が一瞬膨らんだ様な気がした。

 両耳がジンと痺れ、それが先ほどの高い破裂音のせいなのだと気づくのには時間がかかった。ころころ……と、詩乃の足元に転がってきたのは、金色の細い金属の筒。そして、次に見たのは目を丸くさせ、胸を両手で押さえている男性職員。その後1秒もしない内に、バランスを崩し倒れたのだ。

「ボタンを押すなといっただろうがぁ!!」

 男は明らかに異常だと言う事は、もう皆が判っただろう。如何に男性職員とて、男だとしても命が惜しい。
 武勇伝を、と思い行動をできるのは、フィクションの中だけだ、と思える程に。

 銃を突きつけられた状態で、逆らうなんて事は選択肢の中で排除し、いわれるがままに札束を差し出したのだが、撃たれてしまったのだ。だから次も撃たないとは限らない。そう例え、要求を聞いたとしても……。

「おい! オマエだ、こっちに来て金を詰めろ!!」

 男が銃を向けた先には女性局員が固まって立ち尽くしていた。
 当然だろう。……目の前で同僚が撃たれ、そして血を流し倒れているのだ。非現実的な光景。異常な光景を連続で目の当たりにして、脳が完全に麻痺し、身体に命令を下す事ができなくなってしまったから。

「早くしろ! 早くしねぇ
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