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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十三話 収斂
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は軍の先頭だから敵の索敵部隊を鬱陶しいっていう思いも有るのかもしれない。元々攻勢に強い指揮官だから無為に過ごすのが苦手というのも十分あるだろう。

「偵察部隊はどの方向から来たのです」
司令長官は反乱軍との接触が有れば必ず報告するようにと命じてはいるけど同時に無理に追い払う必要は無いとも命じている。そして報告の時は必ず偵察部隊がどの方向から来たかを確認している。

『前方からです、これまでと変わりは有りません』
「なるほど」
『閣下?』
司令長官が視線を伏せ気味にして何かを考えている。ケンプ提督にとっては気になるところだろう。もしかすると余計な提言をしたかと思っているのかも。幾分不安そうに司令長官を見ている。

「ダゴン星域を抜けたからそろそろかな……」
『閣下?』
ケンプ提督の声が幾分弾んでいる、何かを期待するかのような表情だ。
「ケンプ提督、反乱軍の偵察部隊を追い払って下さい。但し目的は逃げる偵察部隊を追って敵艦隊の位置を確認する事です」
『はっ』
大きく頷くとケンプ提督が敬礼をする。司令長官がそれに答礼をして通信は終わった。

「ワルトハイム参謀長」
「はっ」
「民間人を警護した艦隊、おそらくはヤン提督の艦隊でしょうがそろそろ民間人を分離してこちらに向かって来る筈です。不意打ちは受けたくありません。イゼルローン方面軍全軍に哨戒を密に行うようにと指示を出してください。少し艦隊を引き締めましょう」
「はっ!」
参謀長が緊張した声を出した。強敵が迫っている、緩んでいた艦橋の空気がまた緊張を帯びた。



宇宙暦 799年 3月 25日  エルゴン星域  第十五艦隊旗艦デュオメデス ラルフ・カールセン



タンクベッド睡眠を取って艦橋に戻ると皆が厳しい表情で俺を迎えた。空気も硬い、良くない兆候だ。何が有った?
「帝国軍の様子は?」
問い掛けるとビューフォート参謀長が憂鬱そうな表情で首を横に振った。
「残念ですがはっきりとした事は分かりません。閣下が休息を取られてから様子が変わりました。こちらの索敵部隊は敵艦隊に接触する前に追い払われてしまいます。帝国軍はかなり濃密な哨戒線を布いているようです」
「そうか」

帝国軍の動きに変化が生じた。これまではこちらの存在を重視していなかったが今は明らかに敵と認識して動いている。艦橋の空気が変わったのはそれが原因か。
「それとこちらに対しても執拗に索敵行動を仕掛けてきます」
「知られたか?」
ビューフォート参謀長が頷いた。

「……残念ながら。それ以降帝国軍は進攻速度を上げつつあります」
「そうか……」
帝国軍が執拗に索敵行動を仕掛けてくる。難所であるダゴン星域を抜けて余裕が出たという事だな。索敵部隊を出す事に不安を感じなくなったのだろう。
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