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逆さの砂時計
神と悪魔と人間と
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うに、小さな体を抱きしめる。

「な、んで……?」
「ごめんなさい! あなたを置いて行ったりして……本当に、ごめんね!」
「僕からお母さんに相談したんだよ。なんとか妥協してくれないか、って。ごめんな。お前のことを、しっかり考えてやれてなかった」
「……お母さん……、もう、どっか 行かない ……?」

 女の子の顔がみるみる赤く染まっていく。

「もう行かない! 絶対に、置いて行ったりしないわ!」
「ごめん……ごめんな」
「……っう……」

 良かった。
 女の子は安心して泣ける場所を取り戻せたらしい。
 きっと今、彼女は自分と歩いた時間を忘れて二人にすがりたいだろう。
 三人に気付かれないよう、一礼を残してそっと立ち去る。

 女の子の大きな泣き声が背中を打ったが。
 それは、再度家族を得た歓喜の歌声。
 その気持ちが、これから先もずっとずっと続きますように。



 その後。

「で? その格好で、王都中をうろついてきた、と?」

 宿へ戻り、呆れ顔のベゼドラにツッコミを入れられるまで。
 自分が踊り子の衣装を着たままであると気付かなかったことは。
 この際、忘却の海に沈めておきましょう。
 たまには現実から目を背けたって良いですよね?

「綺麗だと思うけど」

 リース……貴女にまで冷静に称賛されても……。



 翌日。
 いつもより妙に賑やかな観客達の中から
 「おどりこのお兄ちゃん、ありがとうーっ!」
 と、ひときわ可愛らしい女の子の元気いっぱいな声が聞こえた。
 群衆に囲まれているせいか、姿は見えなかったが。
 きっと、三人並んで笑い合っていただろう。


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