神と悪魔と人間と
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きましょうか」
立ち上がって、ゆっくりと女の子の手を引く。彼女の狭い歩幅に合わせて、商家が並ぶ通りをのんびりと散策する。
途中、櫛を通した果物に飴を纏わせた甘いお菓子を見掛けた。女の子は俯いていて気付かなかったようだ。ちょっと待っててくださいと言って、店の前で足を止めてもらう。
「はい、どうぞ」
「……良いの?」
「二本買ってしまったので。貴女に食べていただけると、無駄にならなくてありがたいのです」
膝を折って、女の子の目線の高さで赤いお菓子を差し出す。お菓子と自分の顔を見比べて、おずおずと手に取った。
「……ありがとう……」
「此方こそ」
食べ歩きなんて、いつ以来だろうか。遠慮がちに少しずつ口に含む女の子と歩きながら、慣れない甘さを味わった。
その後も目的地を定めず景色の良い所を探したり、何処からともなく聴こえる音楽を楽しんだ。
国の中心だけあって、日が暮れても人通りは絶えず、熱気もなかなか冷めない。
街灯がぽつぽつと色付き始める頃、少しだけ顔を上げてくれるようになった女の子を家の前に送り届けた。入るのが嫌なのか、少し渋った表情。
「……あ」
「フロール!」
声を掛けようとした時、家の扉が突然乱暴に開かれた。
中から現れたのは、女の子と同じ色彩を持つ痩身の男性と……
「フロール!!」
「お お母さ ん?」
やはり同じ色彩のほっそりした女性。
二人は茫然と立ち尽くす女の子に駆け寄り、競うように小さな体を抱き締める。
「なんで……」
「ごめんなさい! あなたを置いて行ったりして……本当に、ごめんね!」
「僕からお母さんに相談したんだよ。なんとか妥協してくれないかって。ごめんな……お前の事をちゃんと考えてやれなかった」
「……もう、どっか 行かない ?」
女の子の顔がみるみる赤く染まっていく。
「もう行かない! 絶対に置いて行ったりしないわ!」
「ごめん……ごめんな」
「……っう……」
良かった。女の子はちゃんと泣ける場所を取り戻せたらしい。
きっと今、彼女は自分と歩いた時間を忘れて二人に縋りたいだろう。気付かれないように、そっと一礼して立ち去る。
女の子の大きな泣き声が背中を打ったが、それは再度家族を得た歓喜の歌声。
その気持ちがずっとずっと続きますように。
「で? その格好で都中を彷徨いてた、と?」
宿に戻ってベゼドラに突っ込みを入れられるまで、自分が踊り子の衣装のままだと気付かなかった事は……この際、忘却の海に沈めておきましょう。
たまには現実から目を逸らしたって良いですよね。
「綺麗だと思うけど」
リース……貴女にまで冷静に称賛されても……。
翌日。
いつもより妙に賑やかな観客達の中か
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