神と悪魔と人間と
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「忘れるなよ。次に姿を隠せば、お前の意思を殺す。可愛い俺のアリア。何処へ行こうと必ず捕まえる。大事な物を護りたいなら、決して俺を裏切るな」
「……解っています。離して」
冷静を装う無表情の裏にどれだけの感情を隠しているのか。本当に、健気で愚直で……救いようが無い孤独な女。
「もう少し、このままで」
花の甘い香りがする髪に顔を寄せて、目を閉じる。
美しい偽りの創造神アリア。それを求めて旅立った愚かな二人の男。覚醒したもう一人の女神。
さぁ……今少しの時間を、どうやって遊ぼうか?
敷地の片隅で、女の子が泣いている。
「どうしたのですか?」
肩に付く長さの茶髪を両耳の後ろで括った五歳くらいの女の子が、黒い瞳を潤ませて自分を見上げた。
「お母 さん、が、家 出て 行っちゃ た、の」
「……家を?」
何度も何度も流れる涙を手で拭ったのだろう。目元が赤く腫れて痛々しい。
「お母さ ん、お父さん、のお母さん と、信じる神さま 違う から……っ もう、ついて 行けない って」
「……そう……」
崇拝対象の相違は、時として生活習慣にも大きな影響を与える。それを納得した上で交際したとしても、幼少期に植え付けられた基本となる物事の捉え方や発想の根幹は容易に変えられるものではないし、折り合わない部分はどうしても生まれてしまう。
それを責めるのは筋違いだと思うが……幼い子供にまで押し付けなければいけない思想など、大切にする必要があるのだろうか?
この子はただ、大切な家族と一緒に居たかっただけ。一緒に食事をして、遊んで、会話して、寝起きを共にする以上に、望むものなど無かったろうに。
「……」
掛ける言葉を探してみたけれど、この子の心を埋める手段は見付かりそうもない。
欠けた愛情は代わりが利くものではないし、その場限りの慰めや説教で誤魔化しても無意味だ。本当に必要としている相手が、手を振り払ってしまったのだから。
今のこの子に言葉は無力。せめて心が凍り付いてしまわないよう、地面に膝を突いてぎゅっと抱き締める。子供特有の柔らかい髪を撫でて、肩を抱いて。耳元で更に大きくなる、悲鳴にも似た喪失の泣き声を黙って受け入れる。
「……散歩しませんか?」
「さん ぽ?」
何十分経ったのか。
女の子が泣き疲れるまで、一緒に居た。落ち着いてきた様子の涙をハンカチでそっと拭って、笑い掛けてみる。
「都中をいっぱい歩いてみましょう。美味しい物をたくさん食べて。綺麗な景色を見に行くのです」
「……でも……」
「夕方になる前に帰宅すれば大丈夫です。さぁ」
どうしますか? と、掴むのではなく、差し出してみる。
女の子は戸惑い……暫く悩んでから、そっと小さな指先を乗せてくれた。
「行
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