第一章
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キラ
ブータンは幸せの国だ、その国にいてだ。
その国の街の一つプナカに住んでいる少女ジツェン=クリシュナは父であるカルマ=クリシュナにその黒く大きな目を向けて言った。
「お父さん、いい?」
「どうした?」
父はお茶を飲む手を止めて娘に顔を向けた。家の仕事である服屋の店先でのやり取りだ。
「何かあったか?」
「うん、うちのお店だけれど」
ジツェンが言うのはその店のことだった。
「どうなのかしら」
「どうなのかってどうしたんだ」
「いや、売っている服がね」
その服を見ての話だ。
「ゴとキラばかりね」
「それは当たり前だろ」
カルマは何を言っているといった顔で娘に返した。
「ブータンだとな」
「服はね」
「この服を着ろって決まってるんだからな」
「男の人はゴで」
「女はキラだ」
「その二つよね」
「この服はな」
それこそと言うクリシュナだった、青のゴを着た服で。
「着ないと駄目だからな」
「ブータンだと」
「そうだ、そう言う御前だってな」
カルマはジツェンを見つつ言った、黒く腰まである長い髪は楚々としていて穏やかな表情でだ、やや面長の顔で肌は白い。睫毛は長く眉は細く奇麗だ。唇は薔薇色で小さい。
そしてだ、その服はというと。
上着は長袖の黄色いシャツで首には赤いネックレスがある。そしてそこから長い赤と白の花の模様が入った長い肩掛けであるラチューをかけている、
濃い黄色の丈の長いスカートには仏教の様々な模様が紺や赤、白で入れられているがそれは何処かエジプトの壁画文字を思わせる。そして丈の短い羽織風の濃い黄色のテュコという服も手にしている。その生地は横糸が浮き出す様に織られているがこの織物はクシュラタという。頭には赤ィ王冠を思わせる帽子がある。
その見事な服を着ている娘にだ、こう言ったのだ。
「キラだろ」
「ええ、それもね」
「店に出る時はな」
「こうしてよね」
「うちの看板の意味でもな」
つまり客寄せも兼ねてというのだ。
「うちで一番いい服を着てもらってるからな」
「こうしてよね」
「そうだ、キラの中でもな」
「お店に出る時は一番の服ね」
「着ていてどうだ?」
その気持ちをだ、娘に聞いたのだ。
「一体」
「いいわよ」
微笑んでだ、ジツェンは父に答えた。
「私だって女の子だから」
「そうだろ、御前は顔も髪もいいしな」
「ええ、けれどね」
「けれど。何だ?」
「背はね」
このことについてはだ、ジツェンは苦笑いを浮かべて言った。
「低いけれど」
「この前子供に間違えられたな」
「全く、これでも高校生なのに」
「中学生と間違えられたな」
「困ったことよ、小柄なのに」
それでもというのだ。
「
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