暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第169話 現実の痛み
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いた。

 そして、しっかりと詩乃も頭を下げて見送った後。これまでの事情を正直に話そうかどうか、と悩んだ。その時、新川から疑問を聞いた。

「え、えっと……何処かの偉い人、なの? 朝田さん」
「いや、私にも……判らなくて」

 これは本当の事だ。
 名前位聞いておけば良かったと今なら強く思う。だけど、初対面の相手にそこまで言える様な強さを持っていない。……全員が、周囲全員が敵だと、強く思った自分なのだから。一度、心に刻み込んだ印を簡単に消す事などは出来なかった。

「ただ……、これ、ご馳走してくれたから、……何時かはちゃんと返さなきゃ」
「え? でも朝田さんが教えてあげたから、じゃないのかな?」
「え、あー……うん。でも 私 そんな大層な事、してないし。 向こうの方が大きい。 貸し借りなしが、心情……だから」

 詩乃は軽く笑顔を作ってそういった。その笑顔に、新川は相好を崩して頭をかいた。

「そうだったね。シノンもきっと……」
「あ、うん……」

 詩乃はゆっくりと頷いた。でも、あの世界の自分と今の自分はまだまだ遠すぎる。

 まだ、あんなに強くなんかない。……強くなれていないから。強くなれてないからこそ、今日あった本当の出来事を、この街で唯一気を許せる彼にも。戦友である彼にも言えなかったんだ。


「あ、ねぇ。一昨日の事、聞いたんだ。大活躍だったんだってね? なんと、あのベヒモスをやっつけちゃうなんて」


 そこからの話はあの世界、《GGO》の話になった。

 何を隠そう、彼こそが彼女を銃の世界に導いた人、なのだ。
 詩乃は過去を振り払う為に、再び《あの銃》と対峙できる様になる様に、心に深く深くえぐり、消えない弾痕を刻み込んだあの黒い拳銃ともう一度向き合い、戦い、乗り越える為に。


 《詩乃》は、《シノン》となったのだ。









 そして、同刻某場所にて。

「……良かったのですか?」
「ん? どうして」
「いえ、坊ちゃんは何処か頑なに彼女のことを拒んでいる様子でした。……私も全てではありませんが、大体事情は察しました。お礼を、と思っている彼女を振り払う様に戻って、と言えば乱暴に聞こえますが」

 そう言う男は勿論、綺堂だ。詩乃を助けたのは隼人。

 ……まぁ、十分判ると思うけれど、一応明記しておく。

 そして、隼人は軽く空を見上げた。
 綺堂こと、爺やは彼女とはあまり話してないし、あそこだけを見たら、怯えていた、位にしか思いつかないだろう。……心を読める超能力者ならまだしもだ。

「……彼女は、以前のオレと一緒だ、って思ってね」
「え?」
「深く傷ついて、俯いて、自分の殻に篭ってたあの頃の」
「………」

 綺堂は、
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