暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
風の行く先へ
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ネクト!」


「!? っあ」

 しまった。
 油断大敵。

「……っ!」

 とん、と軽い音で、男の剣身が私の心臓を刺し貫いた。
 不思議と痛みは感じない。
 けど、これはちょっと、危険かな?

 すみません、師範……。
 いつ、いかなる時も……冷静にって 教え、……守れ ……

「……貴女……」
「…………え?」

 あれ?
 本当に全然、少しも痛くない?
 私の胸を刺した光る剣も消えて、怪我の痕跡すら残ってない。

「お前は……!」

 男が動揺してる。
 男の横に突然現れた女性も、何故か驚いた表情で私を見てる。

 あ。
 この女性、髪が白金色で、虹彩が薄い緑色……、って……

「なんでしょうか、これ?」

 なんか妙に視界が明るくなったと思ったら、私自身が蒼色に光ってる?
 ほんの少しだけ青みが混じる、乾き切る前の干し草のような緑色。

 気付けば体が内側から温かくなって、まるで入浴してる時の感覚。
 刺された筈の場所が一番温かい。

「……っ こちらへ来て!」
「え? あ」

 女性に腕を掴まれた。
 と、思ったと同時に、景色が一変する。

 ここは……草原?
 確か今は、月明かりが眩しい真夜中の雪山に居た筈。
 何故、緑豊かな草原で、穏やかな風と真昼の明るさに包まれているのか。

「あの?」

 かつてない大規模な怪奇現象に、ちょっと頭が付いて行けない。
 何か知ってる風な女性に首を傾げるが、女性はじっと私を見……

 違う。
 私じゃなくて、私の後ろ?

「……なん、でしょうか……これ?」

 精一杯首を回して見た背中に、純白の翼。
 ネックレスに飾られた羽根と同じもの……
 だな。どう見ても。

「逃げて」
「え?」
「貴女が持っているその羽根には、空間を移動する力がわずかに残ってる。それを持って念じれば、貴女になら使えるわ。だから、逃げて。可能な限り遠くへ。レゾネクトにだけは、何があっても決して捕まってはいけない! 羽根が導く先へ、逃げて!」

 必死だ。
 何故かは解らないが、この女性は私を護ろうとしてる。

 『レゾネクト』とは、あの金髪男のことか?
 そういえば見当たらないが。
 この女性は、あの男から私を遠ざけようとしているのか?

「あの、貴女は」
「忘れないで。貴女までが道を誤ったら、世界は」
「!」

 まただ。
 また、景色が変化した。
 今度は、夜の月に白く照らし出されている領主の館(実家)の前。
 女性の姿も見当たらない。

「……なんなの、いったい」

 周囲を見渡せば、背中にあった筈の純白の翼がいつの間にか消えてる。
 目の錯覚?
 それ
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