風の行く先へ
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うんだが。
空気? 雰囲気?
的確な表現が見つからないが、そういう、『気配』?
みたいなものだ。
だが。
「次から次へと、よく出てくるものだ」
男は愉しそうに笑ってる。
そう。
顔は笑っているが。
「! なにを……っ」
羽根を握る手が引っ張られ、男の腕の中に体ごと抱き寄せられる。
咄嗟に顔を上げたら、男の顔が視界を占領した。
口を、塞がれてる。
気付いた時には口内に異物が入り込み、それが私の舌に絡みついていた。
男の唇が強く吸いついては離れ、角度を変えて、また私の口を塞ぐ。
かなり苦しい。
「フィレス」
何度も何度も同じことをくり返した後、耳奥にねっとり塗りつけるような甘い声で、名乗ってもいない私の名前を呼ぶ。
息苦しさで熱を持った頬に、軽く触れるだけの口付けを落とされた。
「……なるほど。どうやら貴方は、私に害を加える者のようだ」
「!」
さりげなく柄を握っていた右手で、鞘から剣身を引き抜き。
男の体を斜めに斬りつける。
ああ、寸手で気付いて飛び退いた。
声を出すんじゃなかったな。
失敗した。
「面白い。俺の力が効かない人間は初めてだ」
『力』?
「何の話かは知りませんが……見知らぬ異性に断りもなく唇を重ねるとは。失礼ながら、育ちがよろしくないのでは?」
一目見た瞬間、声が耳を撫でた時から、頭の片隅で感じていた違和感。
ベゼドラさんとよく似た気配だが、これは違う。
ここに居るようで、居ない。
私を見ているようで、見ていない。
「く……っ……はは。育ち、ね。確かに、人間の生活とは、ほど遠いな」
笑いながら、笑ってない。
これは。
「貴方は、敵か」
「そうだな。少なくとも俺にとっては、旨そうなエサだ」
「悪食が過ぎます、ね!」
剣を前に構え、男の心臓を狙って素早く踏み込む。
まあ、当たらないだろうな、とは思っていたけど。
突きに徹しても、たまに斬撃に切り替えても。
男はひょいひょいと、軽くかわすばかり。
「剣の使い手、か。なら、俺もそれで応じてやろうか」
男の手に、淡く薄い緑色に光る細長い剣が現れた。
またか。
また、怪奇現象なのか。
そろそろ本気でご遠慮願いたいのだが。
「! っと」
男の放った一撃が、鎧に護られてない脇腹を掠める。
赤い制服が一部分だけ、はらりとめくれた。
怯まず突きを返すが、当然避けられる。
うん。
分かってたけど、強いな、この男。
多分……絶対、敵わない。
今のままでは。
「レゾ
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