暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
風の行く先へ
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か」
 「そうだな。少なくとも俺にとっては……旨そうな餌だ」
 「悪食が過ぎます、ね!」
 剣を前に構え、男の心臓を狙って素早く踏み込む。
 まぁ、当たらないとは思ってましたがね。
 突きに徹しても、たまに斬撃に切り替えても、男はひょいひょいと軽く躱すばかり。
 「剣の使い手、か。なら、俺もそれで応じてやろうか」
 男の手に、薄緑色に光る細長い剣が突然現れる。
 またか。
 また、怪奇現象なのか。
 そろそろ本気でご遠慮願いたいのだが。
 「っと……」
 男の放った一撃が、鎧に護られてない脇腹を掠める。赤い制服が一部分だけはらりと捲れた。透かさず突きを返すが、当然避けられる。
 うん。分かってたけど強いな、この男。多分……絶対、敵わない。
 今のままでは……
 「レゾネクト!」
 「!? っあ」
 しまった。油断大敵……
 「……っ」
 とん……っと、軽い音で男の剣身が私の心臓に突き刺さった。不思議と痛みは無い。
 けどこれ……ちょっと、危険かな……?
 すみません、師範……いついかなる時も、冷静にって 教え……守れ ……
 「……貴女……」
 「…………え?」
 あれ? 本当に全然、少しも痛くない?
 剣も消えて、怪我すらしてない?
 「お前は……!」
 男が動揺してる。男の横に突然現れた女性も、何故か驚いた表情で自分を見てる。
 あ、虹彩が薄い緑色……って……
 「……なんでしょうか、これ?」
 自分が蒼色に光ってる? 体が内側から温かくなって、まるで入浴してるみたいな感覚。刺された筈の場所が一番温かい。
 「……っ 此方へ来て!」
 「え? あ」
 女性に腕を掴まれた。と、思ったと同時に景色が一変する。
 此処は……草原? 確か今は夜中の筈。何故、真昼の明るさに包まれているのか。
 「あの……?」
 かつてない大規模な怪奇現象に、ちょっと頭が付いて行けない。
 何か知ってる風な女性に首を傾げるが、女性はじっと自分を見……
 違う。
 自分じゃなくて、自分の後ろ?
 「……何、でしょうか……これ?」
 精一杯首を回して見た背中に、純白の翼。
 ネックレスに飾られた羽根と同じ……だな。どう見ても。
 「逃げて」
 「え?」
 「貴女が持っているその羽根には、僅かに空間を跳躍する力が残ってる。それを持って念じれば、貴女になら使えるわ。だから、逃げて。レゾネクトにだけは決して捕まっては駄目。羽根が導く先へ逃げて!」
 必死だ。何故かは解らないが、この女性は自分を護ろうとしてる。
 レゾネクト……金髪男の事か?
 そういえば見当たらないが、あの男から自分を遠ざけようとしてるのか?
 「あの……、貴女は……」
 「忘れないで。貴女までが誤ったら世界は」
 「!」

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