暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
風の行く先へ
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なんだかよく分からない怪奇現象に遭遇したばかりだ。以降、特に変わった体験は無かったから安心していたのだけど。
 「……来ないでください、怪奇現象」
 祈りつつも足を向けてしまうのは、いつものなんとなく、だ。本当に危険な物なら決して近寄ろうとは思わないから、あの光は悪い物では無いのだろう。多分。
 「…………羽根?」
 光る物の正体は、純白の羽根のネックレスだった。細い鎖ではなく、捻った黒い紐に銀の留め金で飾られた薄く光る羽根。手に乗せて大幅にはみ出す長さ。
 鳥の羽根にしては大きいな。一枚でこれなら、全体像はどんなものになるのか。ちょっと想像できない。
 「綺麗……ではあるけど、なんだろう? 弱々しいな」
 本当の姿じゃないからか?
 「人間が持っていても使える物じゃないぞ?」
 「…… っ!?」
 羽根を掲げて見てたら、背後から知らない男性の声が耳元を擽った。反射的に肘を振って……空振り?
 勢いで体を反転させ、胸元で羽根を握りながら壁に背中を預ける。
 数歩先に立ってるのは、真っ黒な上下服を着た金髪紫目の……なんだろう……ベゼドラさんに似てる。
 いや、顔とかは全く違うんだが……空気? 雰囲気? 的確な表現が見付からないけど、そういう気配、みたいなものだ。
 だが
 「次から次へと、よく出て来るものだ」
 男は愉しそうに笑ってる。
 そう。顔は笑ってるが……
 「! なにを……っ」
 羽根を握る手が引っ張られ、男の腕の中に体ごと抱き寄せられる。咄嗟に顔を上げたら、男の顔が視界を占領した。
 ……口を塞がれてる。
 気付いた時には口内に異物が侵入り込み、呼吸を奪おうと舌に絡み付いてた。強く吸い付いては離れ、角度を変えてまた口を塞ぐ。
 かなり苦しい。
 「んっ……は……」
 「……フィレス」
 何度も何度も同じ事を繰り返した後、甘い声で、名乗ってもいない名前を呼ばれる。息苦しさで熱を持った頬に口付けを落とし……
 「……なるほど。どうやら貴方は、私に害を与える者のようだ」
 「!」
 さりげなく柄を握ってた右手で剣身を鞘から引き抜き、男の体を斜めに斬り付ける。
 あぁ……寸手で気付いて飛び退いた。声を出すんじゃなかったな。失敗した。
 「……面白い。俺の力が効かない人間は初めてだ」
 力?
 「何の事かは知りませんが、突然見知らぬ異性に唇を重ねるとは。失礼ながら、育ちがよろしくないのでは?」
 一目見た瞬間……声が耳を撫でた時から、頭の片隅で感じてた違和感。
 ベゼドラさんによく似た気配だが、これは違う。
 此処に居るようで居ない。自分を見てるようで見てない。
 「く……っ……はは。育ち、ね。確かに、人間の生活とは程遠いな」
 笑いながら笑ってない。
 これは
 「……貴方は、敵
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