暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
風の行く先へ
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っう、あ……うあぁああっ……」
 どうやら私に害意は無いと認めてくれたらしい。縋り付いて、くしゃくしゃだった顔を更に涙で濡らした。


 「……行きましょう」
 「………はい……」
 泣き疲れてぼんやりとした少女に外套を巻き付けて立たせてみたが、やはり相当辛そうだ。肩を貸してはみたものの、足を伝い落ちる自身の血に気付いて、また震え出した。
 「ダリスン! 彼女を近くの村まで抱えて行ってあげて!」
 外で待機してた黒い髪の仲間が、俺? と自分を指して駆け寄って来る。そのまま家に入ろうとして、一度ピタリと足を止めた。
 「……俺はダリスン。ちょっと離れた所に在る村の自警団の一人だ。君に危害を加えるつもりは無いんだけど、君は今、歩ける状態じゃない。一刻も早く安全な場所へ連れて行きたいから、手を貸しても良いかな?」
 私に支えられてカタカタと震える少女は、暫くダリスンの青い目を凝視して……ぎこちなく頷いた。
 恐怖心を刺激しないようにゆっくりと歩み寄り、そっと抱き上げる。
 「私はもう少しこの家を調べてみます。馬を一頭残しておいてください」
 「了解」
 薄汚い男四人を遠くに停めておいた馬車に押し込んで、仲間達が自警団本部への帰路に就く。
 ダリスンと少女は歩きだ。馬で行けるならそのほうが良いのだが、男達と同じ馬車に乗せる訳にはいかないし、乗馬は少女の体が耐えられないだろう。
 私達にできる気遣いはこの程度だ。


 先日、実家である領主の館から指令が下された。
 最近、領土内で連続して失踪者が出てるらしい。原因究明と失踪者の捜索、再発防止を徹底せよという内容だった。
 私が居を構える村の周辺に該当者は居なかったのだが……念の為と少し遠出して警戒範囲を拡げた矢先の、この事態。
 失踪者の報告こそ無かったが、行商人を襲う山賊がいるらしいとの情報を掴んでなんとかアジトを突き止めてみれば、こうして婦女暴行の現場に出会してしまった訳だ。
 彼女を無傷で助けられなかった事は申し訳なく思う。彼らが失踪者と関わりあれば一度に解決できて良いのだが……その辺りは現場の調査と取調べで明らかにするしかない。
 下半身を剥き出しにしたまま息絶えた山賊を放置して、とりあえず家の中を探ってみる。
 一間しかない屋内。四角いテーブルの上には、散乱した食料と現在唯一の光源である燭台。暖炉に薪は入ってない。椅子は二脚。長椅子は無し。商人や旅人から略奪したのだろう、場所を選ばす無造作に散らかされた金品。……恐らく持ち主は既に存在してないこれらは、何処に返還するべきだろうか。
 「……?」
 暗い部屋の隅に何か光る物が見えた。蝋燭の灯りの反射、ではない。それ自体がぼんやりと光ってる。
 「……光る物に、あまり良い予感はしないな……」
 少し前にも
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