暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
風の行く先へ
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しているのだろう。

「怖がらせてしまって、すみません。もう大丈夫ですよ」

 恐慌状態に陥っている少女の頭を撫でて、肩をぎゅうっと抱きしめる。
 これで落ち着くとは思えないが。
 とにかく、私に敵意は無いのだと、根気強く示し続けるしかない。

「ふ……うぅ、うぐ……っ」

 力の限り四肢を振り回して暴れ。
 疲れたのか、急に大人しくなった。
 体を少し離して、口に詰め込まれた下着を取り払う。

「大丈夫。大丈夫ですよ」
「っう、あ……うあぁああっ……」

 どうやら私に害意は無いと認めてくれたらしい。
 すがりつき、溢れてなお止まらない涙で、くしゃくしゃな顔を濡らした。



「行きましょう」
「………はい……」

 泣き疲れてぼんやりとした少女にマントを巻きつけ、立たせてみたが。
 やはり、相当辛そうだ。
 肩を貸してはみたものの。
 太股からくるぶしへと伝い落ちる自身の血に気付いて、また震え出した。

「ダリスン! 彼女を近くの村まで抱えていってあげて!」

 外で待機してた黒い髪の仲間が、俺? と自身を指して駆け寄ってくる。
 そのまま家に入ろうとして、一度ピタリと足を止めた。

「俺はダリスン。ちょっと離れた所にある村の自警団の一人だ。君に危害を加えるつもりはないんだけど、君は今、歩ける状態じゃない。一刻も早く、君を安全な場所へ連れて行きたいから、少しだけ手を貸しても良いかな?」

 私に支えられてカタカタと震える少女は。
 ダリスンの青い目を、しばらくの間ジッと見て……ぎこちなく頷いた。
 恐怖心を刺激しないように、ゆっくりと歩み寄ったダリスンが、硬直する少女の体を慎重に抱き上げる。

「私はこの家をもう少し調べてみます。馬を一頭残しておいてください」
「了解」

 薄汚い男四人を、遠くに停めておいた馬車へ押し込み。
 仲間達が自警団本部への帰路につく。
 ダリスンと少女は徒歩での移動だ。
 二人も馬で行けるならそのほうが良いのだが、生憎馬車は一台しかない。
 男達と少女を同じ馬車に乗せるわけにはいかないし。
 少女を馬車に乗せれば、徒歩で連行する男達に逃げられるかも知れない。
 かと言って、乗馬は少女の体が耐えられないだろう。
 私達にできる気遣いなど、この程度だ。



 先日、実家である領主の館から指令が下された。
 最近、領地を含む国の東北地方で失踪者が立て続けに出ているらしい。
 原因究明と失踪者の捜索、再発防止を徹底せよという内容だった。

 私が居を構える村の周辺に該当者は居なかったのだが……
 念の為と、少し遠出して警戒範囲を拡げた矢先の、この事態。
 失踪者の報告こそ無かったが、行商人を襲う山賊がいるらしいと
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