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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第168話 別人
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ネルギーの激流が、左足を捉え、吹き飛ばしたが、それでも怯むことはない。

 ミニガンの絶対的死角が存在する事をあの瞬間に、シノンは思い出したのだ。

 それは真上。

 重量武器ゆえに、マウントされたミニガンでは、真上には斜角が取れないのだ。そして、後ろに下がろうにも、落下の速度には敵わない。

 シノンは、ヘカートUの銃床を肩に当て、スコープを覗いた。

 自分が狙われる立場になったその時、ベヒモスの表情からついに笑みが消えた。歯をむきだしに、驚きと怒りの混合燃料による炎を両眼に灯している。


――殺られるのか? このオレがこんな所で!


 ベヒモスの怒りはそのままミニガンに宿り、掃射を続けたが、その更に上、飛ぶように迫ってきているシノンには当たらない。動けず、当てる事も出来ない。


『……それでは、それだけでは勝てない。確かに重機関銃は強力だ。……が、その一辺倒で勝てる程、この世界は。銃の戦闘は甘くはない』


 嘗て、破れた時、に言われた言葉を思い出すベヒモス。まるで、走馬灯の様に、流れる時間が一段と遅くスローになる。

 そう、あの時はミニガン、《GE・M134ミニガン》ではなく、同じ重機関銃の《ブローニングM1919》だった。


 あの男に、正面から撃ち負かされたのだ。


 奇しくも、今ここで戦っている狙撃手(スナイパー)と重機関銃使いは、同じ相手に破れ、そして腕を磨いてきたのだった。

 ……軍配が上がったのは。



 高速で飛来する様に近づくシノン。自分の口元が動くのを思考の片隅で意識していた。入れ替わる様に、笑う。……獰猛で、残虐で、冷酷な微笑。
 もう、距離は殆ど詰めている。安定姿勢とは程遠い射撃であり、この様に使う銃ではないが、殆ど密着撃ちと同じだ。

 着弾予測円(バレット・サークル)が完全に、ベヒモスの頭部を覆い、固定。



終わりよ(ジ・エンド)



 呟くと同時に、シノンはトリガーを絞った。
 冥界の女神の指先から、この世界に於ける一弾辺りで最大のエネルギーを秘めた光の槍が放たれる。その直後、爆発じみた衝撃音が轟渡り、ベヒモスの巨体は円筒状に分解し、拡散した。


 その衝撃、そして、反動リコイルの衝撃から、シノンの身体は跳ね返される様に、後ろへと弾かれ、背中から地面に叩きつけられた。

 思わず、肺の中の空気が一気に外へと排出される。


「……はぁ、はぁ」


 一瞬、酸素を取り込むのが億劫になったが、そのすぐ後には問題なく呼吸をする事が出来た。それは、ゲーム仕様だ、と言えば身も蓋もない。高所落下のダメージもそれなりにあるらしく、HPも減っていたが、死ぬ程ではない。

「……」

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