暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第167話 冥界を司る女神
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男に出会う事になれば、そこを指摘してくるに違いないから。

 
 シノンは、全ての邪念を捨ててスコープを覗き、射撃体勢に入った。

 心臓の鼓動が波打つ音は、着弾予測円(バレット・サークル)の動きに連動している。まだ視界に表示されていないが、その動きを見るまでも無い程、しっかりとこの耳にまで聞こえてくる。そんな中で、シノンはただ機械的に照準線の十字を動かした。距離、風向き、そして標的の移動速度。
 全ての情報を考慮、完全に頭の中で制御して、スコープの視界に見える標的の姿の左上1m程外して固定。この距離からの射撃となると、cm、mm単位で大きなずれとなってしまうから、動く標的対しては、ある程度の予測を立てる、次の動きを加味して照準を合わせるのが定石だ。

 そして、着弾予測円(バレット・サークル)が視界に現れ、あの男の身体の約3割程がその円内に捕らえた。

 この円の範囲内に、ランダムで命中するシステムとなっている。つまり、3割程入っているのであれば、男に命中する確率は30%と言う事になる。……が、如何に対物狙撃銃(アンチマテリアル・ライフル)の威力を持ってしても、ヒットさせた場所が四肢、末端部に当たった場合は、その部位を吹き飛ばす事が出来ても、即死させることは不可能だ。
 つまり、人体の急所に当たる可能性は更に低くなる。この円の大きさ、伸縮範囲は標的との距離や銃の性能、天候、光量、スキル・ステータス値といった要素によって変動するのだが、その中で最も重要なのが先ほども言ったように、心臓の音、心拍数だ。

 つまり、狙撃手(スナイパー)の心臓の鼓動。

 現実世界で、どんな事であっても、極限に緊張している状態の行動と言うものはどうしても硬さが生まれてしまうのと同じであり、この世界ではその判定が一段とシビアだ。心臓の音が“どくんっ”と脈打ったその瞬間に、円は最大まで広がる。そして、徐々に縮小し、次の脈でまた広がる。その繰り返しだ。故に緊張し、脈打つ速度が増す、つまり心拍数が上がればあがる程、困難となってしまうのだ。
命中率を上げようと思ったら、狙撃は鼓動と鼓動の谷間を狙うのが一番だ。

 だが、それは机上の空論ともいえる。

 人間誰しも、ここ一番に集中しなければならない状態に陥れば、脈打ちは早くなる。訓練に訓練を、練習に練習を重ねた者達が行き着く領域に、その鼓動の抑制と言うものが出来る様になるのだ。一介のゲーム好きなプレイヤーであれば、そんな事はほぼ不可能だ。それが、この世界で狙撃手が居ない最大の理由でもある。

 如何に、落ち着け と自身に言い聞かせても、当たらないから。

 だが、シノンは心の中でつぶやく。

 この程度のプレッシャーがいったいどの程度のモノだろうか?強敵と相対した訳でも無い。ただ、
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