31部分:第三十一章
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合いを狭めてみせた。
「そう、どちらでもね」
「どちらでもですか」
「貴女次第よ。どうするのかしら」
「はい、それでは」
「ええ、それでは」
「今すぐここで」
これが春香の選んだ返答だった。
「御願いします。それでは」
「いい言葉よ。見て」
春香の言葉にあの妖しい笑みを浮かべてだ。沙耶香から見て右手を見てみせた。
そこは一面の鏡である。楽屋の衣装合わせや化粧に使う鏡だ。その端と端には花があり向こう側にある様々な舞台衣装がある。紛れもなく春香の楽屋である。
そこにおいてだ。沙耶香は鏡を見ながら言ってみせたのである。
「鏡よ」
「鏡ですか」
「鏡は全てを映し出してくれるわ」
こうも言ってみせたのである。
「そう、私達の全てをね」
「全てをですか」
「私達がこれからすること全てをね」
今度の言葉はこれであった。
「映し出してくれるわ」
「私達の全てを」
「さあ、見るのよ」
言いながら春香に歩み寄る。そしてまた右手の指を鳴らすとだ。
春香の服が自然に脱げた。そのうえで生まれたままの姿になる。小柄だがまるで彫刻の様に整った肢体だ。その肢体を露わにしてみせたのである。
その春香の傍まで来た。そしてであった。
「貴女の美しい姿をね」
「私の美しい姿を」
「そうよ、見るのよ」
こう言ってみせるのである。
「貴女のその美しい姿をね」
「貴女と交わるその姿をですか」
「人は肌と肌を重ねている時こそが最も美しいのよ」
裸の春香を抱いた。そうしてだ。
唇と唇を重ねてだ。次の言葉だ。
「それを今から見るのよ。この上なく美しい貴女をね」
「・・・・・・はい」
沙耶香の言葉にこくりと頷く。そうして彼女に抱かれるのだった。そこに映る二人の姿はこの上なく妖しく、そして美しいものであった。
黒魔術師松本沙耶香 魔鏡篇 完
2010・5・2
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