クロスツェルの受難 C
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ーブルを飾る赤い花の植木鉢を持ち上げ、自分の右肩に乗っているリースに近付けてみる。
植物を鉢に植える習慣があるのは、人間だけなのだろう。
不思議そうにじっと見つめ、花弁にぴょんと飛び移った。
「うん。まだ元気みたい。この子に朝陽を浴びせて水滴を垂らせば大丈夫。私、ここに居ても良い?」
「そう……良かった。では、宿に居る間は、この花がベッドになりますね」
「うん」
少し大きな花弁の上で、ころんと横になった。
見た感じは元気そうでも、力は残り少ないと言うし、辛いのだろうか?
震動で落としてしまわないよう、テーブルの上にそっと戻す。
「今日が一週間の初日として、残り六日。私は、教会関係で手が離せそうもありません。だからといって、人間にイタズラを仕掛けてはいけませんよ、ベゼドラ」
四角形の大きな窓に寄りかかって外を眺めているベゼドラに。
念の為、一応、釘を刺しておく。
ベゼドラは、「へいへい」と適当に手を振って流してはいるが。
旅を始めて以降、彼は一度も女性に対して乱暴なことはしていない。
多分、ロザリア以外は女性として見ていないのだろう。
そういった面で心配する必要はなさそうだ。
もちろん、男性の生命力なら喰っても良いという話ではないのだけど。
「丸くなりましたよねえ」
「ぁあ?」
「いえ、なんでも」
卵焼きのサンドイッチにこだわり始めたり。
結果的には人助けをしていたり。
私の説教があるにしても、彼の行動はきっと、悪魔らしくはない。
今の彼をロザリアが見たら、笑うのだろうか。
それとも呆れるのだろうか。
知るかよ、バカ。
なんて、ぶっきらぼうな幻聴が耳の奥をくすぐって。
ほんの少し、笑えた。
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