クロスツェルの受難 C
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ベゼドラをその場に残し。
プリシラが使っている執務室の手前の部屋へと足を運ぶ。
途中、この教会に勤めているらしい数人の信徒とすれ違った。
自分を見る彼らの、好奇心とわずかな同情に満ちた生温かい視線が痛い。
プリシラの破天荒ぶりは教会内で有名だからな。
昔はどこで何をしていても「孤児のクセに」と陰口を叩かれたものだが。
プリシラとアーレストが友人になってからは、それもピタリとやんだ。
むしろ好意的に同情されるようになり、慰める者まで現れたくらいだ。
気付くとどちらかに追い回されていたり、何かしらの罠に嵌っていたり、化粧付きの女装をさせられている様子が、よほど憐れに見えたのだろう。
しかし、自分は同情や慰めが欲しいとは思っていないし。
プリシラ達を嫌っているわけでもない。
苦手ではあるが。
本っ当ーに、どうしようもなく苦手ではあるのだが。
彼らが教えてくれたことは、数え切れない。
感謝しているのだ、これでも。
あの二人組が、もう少し穏やかに対話できる性格であれば。
誇りを持って堂々と、親友ですと言えたのだが。
教会を出て、まだ明るいうちに王都の主な出入り口付近で宿を確保した。
大規模な居住地は、それだけに人の出入りが激しい。
空室は早めに押さえておかなければ、あっという間に埋まってしまう。
郊外へ出れば話は変わってくるが、そちらはそちらで宿の数が少ないし。
中央教会との往復を考えると、時間的に無駄が多いので却下。
問題は宿代と食費だ。
リースは良いとして、二人分一週間は懐に厳しい。
王都は地元の人手で事足りる為、日雇いの仕事が極端に少ない。
観光客の足が絶えない分、物価も他の居住地に比べて割高になっている。
アリアの情報探しは全面的にベゼドラに任せて。
自分は、仕事探しと踊り子を兼任するしかないか。
「精霊が飲む朝露には、条件などはあるのですか? リース」
ひとまず借りた一室で、一週間の予定を組むことにした。
ベゼドラは放置しても大丈夫だと思うが、リースはそうもいかない。
今一番気を付けるべきは、彼女の体調管理だ。
「朝陽を浴びた花弁や葉に付いた雫なら大丈夫。自然に溜まったものが一番良いんだけど……無ければ池とか泉の水滴を垂らして飲むの。重要なのは、花弁や葉の呼吸を通して表面に積もった生命力を貰うことだから」
「雫よりも、雫を乗せていた植物が生きているかどうかが問題なのですね。だとすると、切り花では不足でしょうか」
「毎日切ったばかりの花なら良いけど、土に接してるほうが力になるわ」
「では、植木ならどうですか? こういう形で土に植わっているのですが」
二台並ぶベッドの間、サイドテ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ