クロスツェルの受難 C
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いが、ここは耐えの一手だ。
もしくは、一週間のうちにプリシラが飽きてくれることを切実に願おう。
切実に。
「っと……そういえば、宿泊先はもう決めてるの?」
「これからです」
自分だけなら、教会で客室を借りても良かったのだが。
ベゼドラが問題になりそうなので、それは遠慮する。
滞在期間中ずっとプリシラの傍に居るのも恐ろしい。
「なんなら私が都合し」
「いえ。連れと相談した上で探して決めますのでまったく問題ありません」
この女性の息が掛かった場所に行こうものなら、何を仕掛けられるか。
考えたくない。
「あら、そう? 残念」
何がどう残念なのですか……っ!
「じゃ、また明日ね」
ぽんぽんと自分の肩を二回叩いてから執務室へ戻っていく背中を見送り。
頭を抱えて背中を丸め、床に向かって盛大なため息を吐き出した。
胃が痛いほどの不快感を訴えているが、一週間、耐えるより他に無い。
軽く拷問だ。
「クロスツェル」
「!!」
聞き慣れた声に顔を上げれば。
いつも通りの見慣れた顔が、正面から自分を見下ろしている。
咄嗟に両腕で顔を隠そうとするが。
彼は興味なさそうに「何してんだ?」と半眼になるだけ。
「……そうでした。貴方は、自分の目的以外はどうでもいい方でしたね」
「あ? 何をいまさら」
ええ、そうですね。
私と貴方の感覚の違いに、改めて大きな開きを実感しているだけです。
「お前が女装趣味の芸人崩れだろうが、変態だろうが、一向に構わないが」
「女装趣味でも芸人でも変態でもありません! 必要がなければこんな格好死んでもお断りですッ!!」
ギッ! と睨みつけたら「お……ぉお……?」と言いながら数歩退いた。
アーレストの時もそうだったが。
自分は、本物の悪魔に怖がられるほど凶悪な顔をしているのだろうか?
そういう反応をされると地味に傷付くのだけど。
しかし、今の発言は断じて許容できない。
私にだって、男性としての自尊心くらいはある。
ただ、プリシラやアーレストには、どうしても頭が上がらないだけだ。
「はあ……。渡国申請の協力はお願いしましたが、認可されるまで一週間は掛かるそうです。私はその期間、教会で踊り子の真似事を命じられました。教会にも通常業務があるので一日辺り数時間から半日程度だと思いますが、私がここに居る間、貴方は別口で王都の内外を探ってきていただけますか」
「ああ。ザッと見てきた限りじゃ王都の内部に悪魔の気配はなかったが……郊外と合わせて、もう少し突っ込んでみるか」
「お願いします。こちらで待っていてください。すぐ着替えてきますから」
椅子から立ち上がって、代わりに座った
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