クロスツェルの受難 B
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かしな奴らだ。
しかし、ざっと見渡した印象として、悪魔の気配や干渉は感じられない。
こんな平和ボケしてる場所にアリアが現れるとは思えないが。
「……教会にも行ってみるか」
要所要所を大雑把に一巡りした後。
クロスツェルが向かった都の中心地に足先を向ける。
時々アリアの名前が聞こえてくるのは、都の信仰が生きてるからだろう。
リースリンデの話じゃ、アリアが隠れてから数千年は経ってるらしいが。
世代を重ねて、神や悪魔の実像が掠れて、生活様式が変わってもまだ。
人間ではないものに救いを求めてるんだな。
欲深いっつーか、なんつーか。
どこまで脆い生き物なんだか。
「? なんだ?」
教会へ近付くにつれて、都民のざわめきが大きくなっていく。
学舎に入る前の小さな子供の声や、男の声が増えてきた。
『話し声』っていうよりは……『歓声』? ……だな。
珍しい催し物でもあるのか?
教会の敷地への入り口手前で、押すな押すなと人間の山がうごめく。
その向こうから微かに聴こえるのは、複数の楽器の音色。
楽団か。
だが、それだけではなさそうだ。
遠くから
「髪先までしなやかで美しく無駄がない」だの
「動きの一つ一つが軽やかでありながら芯が通っていて華やか」だの
踊り子を賛美する単語が流れてくる。
どうやら『舞楽団』のほうらしい。
現代の人間は、崇め立てる神の前でこんなお遊びをするのか。
昔は地面に膝を突いてひたすら黙々と祈るだけだったんだが……面白い。
黒山の人集りから一旦離れ、円状の敷地を反対側に回り込み。
周辺に人間が居ないかどうか、視界と気配でしっかり確認して。
教会本体の二階部分に相当する高さの鉄柵を飛び越える。
人間には見られるなって、クロスツェルにしつこくしつこくしつっっこく説教されまくってるからな。
いちいち確認するとかクソ面倒くさいが、余計面倒になるよりはマシだ。
手入れが行き届いてる植え込みを乗り越えて、入り口側に戻ると。
噴水の向こう側で座って演奏している舞楽団の背中と。
こっち側に体の正面を向けてる、興奮状態の見物客が見えた。
鉄柵の中も相当広いってのにどこから湧いたんだか、見渡す限り人の山。
話題の踊り子は……ちょろちょろ動き回ってるせいで、よく見えん。
「楽器の種類も増えたんだな」
小さな太鼓がトコトコと軽快に鳴り。
澄んだ横笛の音と鈴の音がそれに重なる。
中でも、初めて聴く弦楽器の流麗な響きが耳を惹く。
初耳でもはっきり解るほどの優れた演奏技術とは、並じゃないな。
いったい何者だ?
興味本位で見
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