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短編集
艦隊これくしょん
もう君を離さない
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督がこれを読んでいるってことは、オレは提督の元にいないんだろうな。ここ最近、ずーっと胸騒ぎがしてたんだよ。役目を終えたオレたちがいつまでも提督の所にいられないことをさ。いや、オレだけじゃなくて、龍田だって、金剛たちだってわかってたはずだ。
 提督、オレと提督が結婚してから、色んな事があった。提督と喧嘩をしたこともあったし、戦いが終わって、恥も外聞もなく二人で泣いたよな。でもさ、もう提督と笑い合うことも喧嘩することも、一緒に泣くことも出来ない。オレはそれが一番イヤだ。だって、まだ提督とやりたいことがいっぱいあるんだぜ?提督の子供を産むこと、そしてその子供を一緒に育てて、一緒に巣立っていくのを見守ること、子供の結婚式に出て、老後は世界中を旅するんだ。その時は龍田とか鎮守府の皆と一緒に行きたい。最後は提督のことを見送るんだ。泣いて泣いて、これでもかってくらいに泣いて、提督の後を追いかける。………それがオレの、いや私の望みでした。
 最後に、提督!幸せになってくれ。オレがいなくなったからって不摂生するなよ?すぐに来たら雷撃するからな?オレたちはいつでも提督のこと待ってるから、こっちに来たら色んな事話してくれよ?そして、皆であの頃のようにワイワイやろうぜ。だから、提督こっちにはゆっくり来てくれよな。



 愛してる、提督。
 世界中の誰よりも、提督のことを愛してる。


天龍








 手紙を読み終わった俺の頬を涙が伝って、手紙に染みを作った。

 「バカ………ヤロォ!」

 歯を食いしばり、放った言葉はセミの鳴き声の中に消えていった。









 数十年後、俺は病床に臥せっていた。
 天龍たちとの別れの後、俺は一般企業に就職、普通のサラリーマンとして日々を生きていた。
 そして、俺は親戚の勧めで見合いをし、結婚した。
 子供は三人、どの子も元気に成長し、巣立っていった。
 その頃からだろうが、俺の身体に病魔が巣食っていたと気がついたのは。
 何年も闘病生活を送ったが、最近目を瞑ると浮かぶのは天龍たちといた鎮守府の風景だった。

 「提督、待ってたぜ」

 不意に声が聞こえた。
 声のした方を見るとそこには天龍が立っていた。

 「て…ん…龍?」
 「おう、提督の妻の天龍様だ」
 「本当に、本当にお前なんだな」
 「ああ、本物のオレだよ」

 力を振り絞り、俺は天龍を抱き寄せた。

 「もう絶対に離さない」
 「ああ、オレだって提督を絶対に離さない」

 そして、口づけを交わすと、鎮守府の中へ入っていった。




 −提督が鎮守府に着任しました。これより、艦隊の指揮を執ります−

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