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珠瀬鎮守府
響ノ章
深海棲鬼
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われた提督は、私達を見た。どうするべきか聞きたいのだろうが、そんなのこっちだって聞きたい。
「分かった。運び入れた椅子は一つだから、私は立って食べよう」
「招イタノハ此方ヨ。お前ガ座レバ良カロウ」
「年長者が楽な立場に居るのも可笑しな話だ。座っておけ」
「年長者ヲ立タセテオケルカ」
「年下を立たせておけるか」
 変なところに譲れぬ何かがあるのか、二人は言い合う。と言うか、姫はお風呂や布団の知識はないのにそんな事は知っているのか。しかも、見た目通り、提督より年下なのか。私は姫のことがよく分からなくなってきた。
 そして両者ともに口を閉ざした時、また扉が開けられた。警備隊の隊長さんだった。今回は佩用していない。隊長は夕食を手に立ったままの二人を見て、不思議そうな顔をした。
「どうしたのですか」
「こいつが座らなくてな」
「ソウダ。座ッテクレ提督。私ハお願イシテイルゾ」
「お前……」
 それだけ言って、堪忍したのか提督は椅子に座った。なんでも言うことを聞くと取り決めをしたからか、文句は言わなかった。
「姫よ、私はお前の事が良く分からなくなってきたぞ。布団や風呂の事は知らんのにこういう事は知っているのか」
 その言葉に、姫は黙した。それは只ならぬ雰囲気で、尋ねた提督自身が食事を止める程だった。
「ソレハ、私モ知ラヌ。ダガ、私ハコウ考エテイル。提督ヨ、人格トハ何ダ」
「人間の心理的特性」
「私ハ人トハ違ウヤモ知レヌ。オ前タチガ言ウヨウニ鬼ナノカモナ。ダガ、今コノ話シテイル私トイウモノヲ人格ト、此処デハ呼バセテモラオウ。人格ヲ形成スルノハ、何ダ」
 それは、物質的な物ではない。
「時間……記憶か?」
「私モソウ考エル。重ネタ時間、得タ経験ガ人格ヲ形成スル。デハ……海デ生マレタダケノ私ガ何故戦闘ニ必要ナコトヲ知ッテイル。何故言語ヲ持ッテオ前タチト話セル」
「もしや、お前は」
 提督は驚愕の顔を浮かべる。だが、それを見て、姫は頭を振った。
「否……記憶ハナイ。人格ト呼ベルモノシカソノ身ニ残ラナイノダロウ。正シク抜ケ殻……記憶喪失トイウモノニ近イノダロウナ」
「では何故お前達は戦う」
「提督ヨ、生キテイルトハ何ダ」
 その質問の意味を理解できたものは、この部屋には居なかった。
「生命活動ヲ存続シテイル、脳ガ活動ヲ続ケテイル、ソンナ言イ方モデキルガ種トシテ生キテイルトハ、繁栄ヲ意味シテイルノデハナイカ」
 その告白は、何と深い意味を持つものか。
「繁栄の為に戦い、残った人格故に生を望むというのか」
「ちょ、ちょっと待って提督、何の話をしているの?」
 話に入ってきたのは飛龍だった。
「……お前たちは知らないのか。失念していた」
「知ランノカ、コイツラハ」
 話を聞いていた私は、提督の驚きも、姫の考えも理解できる
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